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The Dillinger Escape Plan

Under The Running Board (1998)
Chaostic Hardcoreの牽引者として他の追随を圧倒的な許さない彼らの2nd EP。前作までとは格段にレベルアップをしており、今後の彼らの基盤を構築したと言ってもよい作品である。この後のアルバムに比べるとまだストレートな部分も残っており初期からの過渡期と言うことも出来るが、目まぐるしく変わる展開の中でスリリングに、そして混沌とした世界観の中でも、ある意味理路整然と構築された音の渦がリスナーを巻き込み心地良くなってくる。メタルだけでなく、ジャズやプログレなど様々な要素を取り入れた彼らの音は複雑怪奇な展開でありながらも、一つ一つの音が非常にクリアである。そして歌っていると言えば語弊があるかもしれないが、彼らの魅力の一つとしてボーカルが混沌とした音の渦の構成要素の一つでありながらも非常にメロディとして主張しているという部分もある。また概して曲が長くなりやすいジャンルではあるが、本作は長くても約3分程とコンパクトに彼らの魅力が凝縮されているため、EPではあるものの彼らに触れる最初のきっかけとしても良いかもしれない。全3曲(再発盤はライブ音源が収録されている)。
☆☆☆★★ The Mullet Burden / Sandbox Magician / Abe The Cop
Chaostic Hardcore Shai Hulud "Hearts Once Nourished With Hope And Compassion"
Calculating Infinity (1999)
前作で見せていた世界観をビルドアップし、完全に彼らにしか構築できないカオティックさを確立した待望の1st。今作ではそれまでのHardcore由来のシンプルさは影を潜めさせ力強さだけを抽出し、そこにジャズやフュージョン要素、一見無秩序に聞こえ不協和音のような響きもあるテクニカルさとカオティックさが渾然となったリフや展開、そしてそれを支える手数と共に時折入るセンスの良いドラムやベース。その上にもはやメロディではなく獣の雄叫びのようなブチ切れ的シャウト。それぞれが遠慮なく主張しすぎていてバラバラになりそうな要素を一つにまとめ上げているセンスとテクニックが詰め込まれている。全てが予測不可能・変幻自在の展開で変態的であるが、無秩序に思えて実は非常に計算尽くされた立体的な音像が作り出す渦に飲み込まれるのが非常に心地よい作品である。全11曲。
☆☆☆☆★ Sugar Coated Sour / 43% Burnt / Destro's Secret
The Running Board / Calculating Infinity / Weekend Sex Change
Variations On A Cocktail Dress
Chaostic Hardcore Converge "June Doe"
Live Infinity (2019)
惜しまれつつも2017年に解散した彼らが名盤と名高い1stの20周年のリイシューに合わせてリリースした、正式音源としては初となるライブEP。本作ははアルバムリリース後の2000年にThe Misfitsとのツアーを収録したものではあるが、音源自体はEPのリイシュー盤でBlack Sabbathのカバー以外は全て収録されており収録音源としては正直あまり価値はないものの、元々高い演奏技術を持ったバンドであるが故にライブ音源であってもその演奏クオリティは完璧であり、当時の勢いがそのままパッケージされている。Hardcore由来の激情とまで言える激しさはそのままに、ライブならではの計算された即興要素が音源よりも色濃くなりChaostic Hardcoreの先駆者である所以を遺憾なく発揮している。ジャズやフュージョンの要素が非常に色濃いながらもそれと双璧をなす激しさとのバランス感が非常に素晴らしく、彼らが作り出す音の渦に巻き込まれていく感覚が非常に心地よい。それは4曲目のラストでサウンプリング音と同期させながら不穏な雰囲気がありながらも何処か静かな夜の海を連想させるような勢いのみで構築された音源でないことも関連しており、このバンドの特殊性が既発音源ながらも色濃く浮き出ている作品と言えるだろう。全9曲。
☆☆☆★★ ------------------------------
Chaostic Hardcore ------------------------------