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Anti-Flag

Die For The Government (1996)
リリース当時はまだ3ピースであったピッツバーグ出身の彼らの1st。この活動初期から彼らの姿勢は一貫しており、全くブレがないことは歌詞を見れば一目瞭然である。特に2曲目はタイトルのインパクトだけでなく、メロディやアレンジなど全てにおいて完璧な、彼らを代表する1曲である。しかしそういった精神面での基本姿勢に変化はない一方で、楽曲面ではまだまだ迷いも感じられる作品である。今作には様々なタイプの曲が収録されているが、幅が広いというよりもまだまだ迷っている、定まったいないという方が自然なくらいにバラバラな印象を受ける。洗練されていないアレンジや若干こもり気味の音質などある種の野暮ったさがこの作品には感じられ、それが良くも悪くもこの作品を象徴している。ただ基本はStreet Punkをベースにしつつ音楽的に雑種多様さを感じさせる彼らの音の根底は既にこの時点で定まっているとも言え、聞けば聞くほど新しい発見がある作品でもある。後の作品ほどベースラインのインパクトは強くないが、所々印象的なフレーズも多い。またそれ以上に何よりもJustinのボーカルとそれに被さっているコーラスからは意志の強さを感じさせてくれるようであり、それがAnti-Flagの最大の魅力である。全17曲。
☆☆☆ You'd Do The Same / Die For The Government / Drink Drunk Punk
Davey Destroyed The Punk Scene / Summer Squatter Go Home
She's My Little Go Go Dancer / Police State In The USA
Fuck Police Brutality / Kill The Rich / Confused Youth
Melodic Punk Street Dogs "State Of Grace"

Underground Network (2001)
Chris#2が加入してから2枚目であり、バンドとしては3rdに当たる今作は、彼らの今後の方向性を決定付けた1枚と言ってもよく、彼らのターニングポイントとなった作品である。高音で声質は若干線が細く、ダミ声ながらも実はポップにシニカルに歌い上げている元々のポリティカルなスタンスは全く変わらないが、今作で明らかに異なるのは冒頭から最後まで一瞬の隙間のなく組み込まれている中音域が強調されつもどことなくジャズベースの暖かみを感じさせるベースラインであろう。ギターのリフがない部分ではメロディの有無に関係なく終始動き回っているラインは、あたかも2つ目のメロディを奏でているかのようであり、かと言って全くメロディを邪魔しておらず、まるでメロディを補完するコーラスがもう一つ存在するようである。今までのような荒々しさはなくなっている分若干ミドルテンポの曲が増えてはいるが、線の細かったJustinのボーカルが太くなったことにより安定感がましており、より骨太になった楽器隊に負けていない名盤である。全13曲。
☆☆☆☆★★ Angry Young And Poor / This Machine Kills Fascists
Underground Network / Stars And Stripes / Watch The Right
The Panama Deception / Bring Out Your Dead
Until It Happens Tou You / Daddy Warbux
Spaz's House Destruction Party
Melodic Punk Pacer "Pacer"

The Terror State (2003)
Fatからの2枚目となる4th Album。今までの作品に比べると若干ポップよりの楽曲が増えており、思わずシンガロングしたくなるような印象的なコーラスが増えている。しかしその一方でベースラインが目立たなくなっているというのが最初の印象ではあるが、聞き込んでいくと結局は何も変わっていない、いつも通りの彼らの姿がこの作品には詰まっている。元々ポリティカルな歌詞に込められた強いメッセージ性をポップなメロディで力強く聞いている側に訴えかけるスタンスであり、それは歌詞やジャケットからも分かるように全く変わらずにベースよりもギターのソリッド感を前面に出しているように感じられ、全ては解釈やスタンスの問題であろう。今までのような荒々しさやそれに伴う躍動感こそもしかしたら表面上薄れているかもしれないが、アルバム自体の完成度は今までで一番である。このメロディとギターの輪郭がくっきりとしているのはトムモレロのプロデュースによるものかもしれない。楽曲に込められた熱量や激しさはしっかりと残しつつも、じっくりと聴かせるあるあ無でもある。また今まで以上にJustinとChris#2のツインボーカルが映えており、前作で方向性が定まりつつあった彼らのスタンスが完全に確立された1枚である。全13曲。
☆☆☆☆★★ Turncoat / Rank-n-File / Post-War Breakout
Power To The Peaceful / You Can Kill The Protester
Tearing Down The Boarder / Death Of A Nation
One People, One Struggle
Melodic Punk The Stereo State "Have All My Friends Gone Deaf?"

Split (2013)
Run For CoverからリリースされたHostage Calmとのスプリット。スプリット相手もレーベルも意外ではあるが、収益は各々の地元のチャリティーに寄付ということで元々ポリティカルな姿勢を貫いてる彼ららしいと納得。今作では今までの彼らにはない一面を見せてくれる。メロディのキーが若干低く、今までのポリティカルで力強いけれども伸びやかで、どこかポップな印象は全くなく初期の様なHardcoreが前面に出ている曲である。個人的にはもう少しポップよりの方が好きではあるが、それでもここ数作ではあまり感じることのなかった雰囲気の曲でもあり、新しさと共に懐かしさを感じることができる。またギターの短音リフは今まで通りであるが、今作ではベースラインがあまり主張していないのも特徴であろう。しかしどんなアレンジでもメロディでも、Anti-FlagはAnti-Flagであり、相変わらずかっこいい。全1曲。
☆☆☆★ Branded Rebelion
Melodic Punk ------------------------------
A Document Of Dissent (2014)
活動20周年を迎えた2013年までの音源からレーベルの垣根を超えてリリースされたこの時点までのオールタイムベスト。最近の楽曲だけでなく1stから2曲、2ndから3曲、3rdからは4曲と多少の濃淡はあるもののそれぞれの作品から比較的まんべんなく選曲されている。元々活動当初から一切ブレることなく自分たちの信念に基づいて活動を続けてきている彼らではあり、曲数は26曲と多いものの初期の怒りを内包した荒々しいサウンドと、作品を重ねるごとに洗練されて耳障りが良くなりつつもポリティカル要素全開の歌詞がキャッチーなメロディとともに載っているRCA移籍以降の楽曲も全てが同じベクトルに存在しており、楽曲の振れ幅はあるものの、根底は何も変わっていないことが体感できる作品になっている。特に1stではまだ青さも残りベースも埋もれがちではあったが、リマスターされたことによってそのバランスが改善されてフレーズが聞きやすくなったことはオリジナル盤を持っていたとしても聞きどころである。全26曲。
☆☆☆★★ ------------------------------
Melodic Punk ------------------------------
American Reckoning (2018)
2015年リリースのAmerican Springと2017年リリースのAmerican Fallの楽曲から選曲されたアコースティックアルバム。原曲の持つ力強さは残しつつも、単にアコースティックという括るにはいかないような彼ららしいアレンジに満ち溢れた作品である。特にアコースティックでありながらも存在感を示しているのは彼らのその他の作品でも同様であるが、Chris#2のベースであろう。アコベであるかどうかは判断が難しいが、中音域で低音を支えつつも温かみがある音色に相変わらずの情感あふれる動きのあるベースラインは健在であり、それがギターの多彩に重ねられたフレーズをお互いに引き立てあっていると言えるだろう。またベースは主張しているもののアレンジ自体は全体にはシンプルでありながら、そこに多層的なコーラスが存分に取り入れられていることにより、アルバムのときとは異なる力強さや質感に溢れている。そして8曲目以降はオリジナルアルバムに影響を与えたカバー曲となっているが、こちらはバンドサウンドである。しかしアレンジは非常にシンプルでギターの歪みも殆どないため、作品全体としては良いアクセントになっていると言える。全10曲。
☆☆☆★ ------------------------------
Acoustic ------------------------------
Live Vol.2 (2019)
2017年の前作同様LAの老舗Troubadourでのライブを収録した、3枚目となるLive Album。選曲自体も前作同様1stからも収録されているなど幅広く、そして時系列ではなくとも一切違和感を感じさせない流れは、彼ら自身がサウンド自体は変化することがあっても方向性という面においては一切のブレがないことを物語っていると言えるだろう。そして1stの曲を除けばアレンジ自体はライブ特有の煽り的なものを除けば殆ど変わっていないが、JustinだけでなくChris#2の存在感が非常に高いことも実感できるだろう。観客の声も入っているもののあまり大きくはなく、ライブの臨場感もしっかりと感じ取れる本作は、なかなか日本で体感することは難しい彼らのライブを音に集中して体感できる作品に仕上がっている。全15曲。
☆☆☆★★ ------------------------------
Melodic Punk Anti-Flag "Live Vol.1"