thewarpedradio

Alkaline Trio

Maybe I'll Catch Fire (2000)
前作で一気に知名度を上げ、Jadetreeからのオファーも来たもののそれを蹴って再びAsianmanからリリースされたという2nd。結果的にはオリジナルメンバーで制作された最後の作品となったが、その完成度は前作に負けず劣らずの傑作である。全体的にはミドルテンポの楽曲が増えてはいるものの、エモーショナルさとパンキッシュさが同居し、3ピースで必要最小限の音数で繰り出される楽曲はシンプルながらも構成が非常にドラマティックであり、ヒリヒリとしたエッジの聞いたリフが織りなす疾走感とそれに加わる何処か陰りや哀愁がありながらも一方で青臭さもあるメロディは健在である。決して派手さがあったり手数が極端に多い訳ではないが、アレンジがシンプルな分強調されたGlennによるドラムやリズムが非常に多彩で魅力的であり、その上を要所要所で低音から高音まで縦横無尽に駆け巡るDanが奏でるベースラインと百戦錬磨のリズム隊に負けず劣らずのMattのギターとボーカルは前作同様素晴らしい。そして最後を締めくくるのは彼らの代表曲の一つである10曲目はシンプルなアレンジとメロディが織りなす最高峰の楽曲と言えるだろう。彼らにしては珍しくゆったりとしたミディアムテンポの楽曲であるが、しっとりと進みつつも途中で一気に爆発する展開は、メロディが持つエネルギーが一気に爆発するかのようである。全10曲。
☆☆☆☆ Keep 'Em Coming / Madam Me / You've Got So Far To Go
Maybe I'll Catch Fire / Tuck Me In / 5–3–10–4 / Radio
Melodic Punk Jawbreaker "Unfun"
From Here To Infirmary (2001)
ポップなメロディと速さではない疾走感を武器にしながらも、そこにゴシックの要素を追加するという彼らの方向性が明確に示された3rd。前作では若干ミドルテンポの曲が多かったが、今作では初期の様な速さが少し戻ってきており今までの集大成と今後の未来を一つにまとめた様な作品になっている。小気味好い疾走感と緩急を織り交ぜた楽曲と、2人の正反対のボーカルが歌い上げるメロディの数々は最初から最後まで飽きさせず、リスナーを掴んで離さない魅力に溢れてる。特に程よくアップテンポでありながらも、エモーショナルなボーカルとメロディは素晴らしい。ジャケットが強烈にダサいのはご愛嬌ではあるが、10曲目の様に彼らがやりそうでやらないミドルテンポから一気に加速するアレンジは反則とも言えるほど素晴らしい。全12曲。
☆☆☆☆ Private Eye / Mr. Chainsaw / Stupid Kid / Anothee Innocent Girl / Armageddon / I'm Dying Tomorrow / Crawl
Melodic Punk Apologies, I Have None "London"
Good Mourning (2003)
4thにしてメジャーからリリースされた今作は、彼らの方向性がこれにて一旦完結したと言ってもいいほどの完成度を誇っている名盤である。元々の彼らのエモーショナルなメロディや耽美的な雰囲気はそのままであるが、今作ではそのひとつの要素であるゴシックを前面に押し出している。しかし単にゴシックだから暗く、重い雰囲気が全体を覆っている訳ではなく薄暗い中から自分なりに足掻いていこうとするかのような力強さや希望にも溢れた様な作品である。これは過去の作品にも感じられる部分であり、全体的に様式美的な雰囲気には満ちてはいるが決して何も変わっていない。そして彼らの特徴の一つである完全に正反対の声質を持つ2人のボーカルはよりその違いが対照的になっているが、全体を通して一つにまとまっている。この2つを繋いでいるものの一つがゴシック的要素とも言えるのではないだろうか。歌詞も含めて死を連想させるかのようなホラーでダークな雰囲気をかなり漂わせているが、メロディは非常にポップで聞きやすい。そういった部分が聞く側を選ばずに幅広い層に支持されている要因であろう。全13曲。
☆☆☆☆★ This Could Be Love / We've Had Enough / One Hundred Stories
Continental / All On Black / Emma / Fatelly Yours / Blue Carolina
Donner Party / If We Never Go Inside
Melodic Punk No Motiv "Daylight Breaking"
Agony & Irony (2008)
前々作で一気にオーバーグラウンドの人気を博したものの、前作ではゴシック感をより押し出したことにより少し物足りなさを感じる部分もあった彼らが3年ぶりにリリースした6th。前作はゴシック感を押し出すあまり少々大げさなサウンドプロダクションになっていたが、今作では前作では影を潜めていた渋みが力強さと共に復活し、曲のバリエーションも増えている。メロディの良さは元々定評があった彼らであり、それはそのままであるものの、今作ではキーボードも一部入っているが基本的にはそれぞれのパートがシンプルながらもバランスよく主張しているように感じられる。その中でも特にドラムが今作では素晴らしいと言えるだろう。決して手数が多いとか、難しい特殊なリズムをしている訳ではないのにメロディとの絡みが非常に素晴らしく、メロディが楽曲を引っ張りつつもドラムも引っ張っているようにすら感じられる。そしてそこに絡み合うDanのベースラインも素晴らしく、派手さはないながらも非常に完成度の高い作品である。全11曲。
☆☆☆☆ Calling All Skeletons / Help Me / In Vein / o You Wanna Know?
Love Love, Kiss Kiss / Ruin It / Into the Night
Melodic Punk The Sainte Catherines "Dancing For Decadence"
Damnesia (2011)
アコースティックという形態を取った上でのセルフカバー作品となる本作は選曲もほぼベストと言ってもいいくらいであり、元々のメロディの良さを最大限に生かした仕上がりとなっている。元々ダークな雰囲気を併せ持つ歌詞やアレンジではあるがメロディは非常にポップであり、それがシンプルなサウンドで再構築されたことによってより明確になっている。しかし単にアコースティックにしたというだけでなく、ギター・ベース・ドラムを基本として構築されたれっきとしたバンドサウンドであり、基本的には原曲が持つ耽美的な雰囲気や疾走感はそのままである所がこの種の他の作品とは一線を画しているところであろう。様々な楽器や音色を駆使しながらも音圧を減らし、音の隙間を大きくして電気音を出来るだけ排除したアレンジは、原曲を尊重しつつも良い意味で楽曲の新たな面、解釈を生み出している。選曲も4thからが比較的多いが新旧問わず新曲も収録されており、彼らの魅力を再確認できる作品である。全15曲。
☆☆☆★★★ Calling All Skeltons / Nose Over Tail / This Could Be Love
Every Thung Need A Lady / The American Scream
We've Had Enough / Olde English 800 / I Remember A Rooftop
Private Eye / Radio
Acoustic Tony Sly "Sad Beer"
Is This Thing Cursed? (2018)
彼らにしては珍しく前作から約5年という月日が経っており、そしてその間にそれぞれがソロ作品を制作していたり、更にはMattがBlink-182に加入という大きな出来事があって、ALK3の活動を危ぶむ声もあったが結果的にはソロ活動だけでなくBlink-182への加入がALK3にとっても良い結果を生み出したのではないかと思える9th。4th頃で完成の域に達した彼ら独自のゴシック感はそのまま継承しつつも、今作ではそこに力強さと躍動感が加わることによって今まで以上に陰りのある明るさと疾走感が前面に出た作品になっており、空気感としては1stや2ndの頃を彷彿とさせる。Mattの歌声も以前よりも太くも哀愁漂う彼独特の声と存在感は更に増しており、それに対するDanの対称的な太くも少し柔らかめな声質の2つが織りなす重厚で多層的な世界観はここ数作でより深化していたが、今作ではそれがより一層輝いている。シンプルなリフがオクターブ上に上がり質感の違いや疾走感を出す手法は今まで通り多用されているが、どことなく今までにない質感の明るいメロディとシンプルなリズムが新境地的でもあり懐かしくもある4曲目など新たな面も感じられる名盤であり、歌詞が付いていないことだけが残念なところである。全13曲。
☆☆☆☆★ Is This Thing Cursed? / Blackbird / Little Help? / I Can't Believe
Sweet Vampires / Goodbye Fire Island / Heart Attacks
Worn So Thin / Throw Me to the Lions / Krystaline
Melodic Punk Relient K "Two Lefts Don't Make A Right... But Three Do"