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Propagandhi

How To Clean Everything (1993)
自主制作の3枚のデモを経てFATから発売されたカナダを代表するポリティカルバンドであるPropagandhiの1st。FATからリリースとはなっているが王道のMelodicサウンドではなく、ギターが1本であるとは思えないような厚みのあるギターが中心でありつつも3ピースであることを活かした速さの中にスカを織り交ぜた緩急や音の強弱、足し引きなど非常に多彩なメロディやアレンジが中心となっている。それでもまだこの頃は勢いそのままにシンプルに駆け抜ける楽曲が主ではあるものの、既にこの頃から後に見られるようなプログレ的な展開は随所に見られている。そういったサウンド面では軽さを持ち合わせつつもスラッシーな重さをも兼ね備えた稀有な存在であるが、それと併せて着目すべき点は彼らの姿勢、思想が全面に出たポリティカルな歌詞であろう。スカを全否定する歌詞をスカのリズムで歌う5曲目やタイトルだけでなく歌詞に作品全体にFuckを多様しつつも非常にポップさが漂っていたりなど一筋縄ではいかず、聞けば聞くほど中毒性が増す作品である。全12曲。
☆☆☆☆★ Anti Manifesto / Hate, Myth, Muscle, Etiquette / Ska Sucks
Middle Finger Response / Haillie Sallasse, Up Your Ass
This Might Be Satire / I Want U 2 Vant Me
Fast Melodic Punk I Spy "Revenge of the Little Shits"
Less Talk More Rock (1996)
前作での軽さを伴った疾走していくサウンドから大きく変化を遂げた2nd。前作同様ポリティカルな姿勢は変わっていないが、前作では軽さを持ったサウンドである意味主張を皮肉的に歌っているような楽曲があったりなど、そういった主張を直接的にサウンドでも表現をしているとは言えない部分もあったが、今作では力強さが格段に増しており、セリフを入れたインストナンバーが入っているなどシリアスさが増しているように感じられる。これは作品の中にちょこちょこと顔を出しているHardcoreに傾倒した楽曲が特に物語っていると言えるだろう。しかしそれは変化の一部でしかなく、前作のようなファニーさはなくなったものの軽さや疾走感は残っているため、過渡期ではあるがこの作品が与えたインパクトは非常に大きい。前作以上にポリティカルさを打ち出しており、これまでもそういった政治的姿勢を全面に出していたバンドはいたが、それとは距離をおいているようなFATのバンドがこういった作品を出したという点に置いてもこの作品の価値は非常に高いと言えるだろう。全14曲。
☆☆☆☆★ Apparently, I'm a 'P.C. Fascist'
Nailing Descartes to the Wall/(Liquid) Meat Is Still Murder
Anchorless / I Was a Pre-Teen McCarthyist
Resisting Tyrannical Government
The Only Good Fascist Is a Very Dead Fascist
Refusing to Be a Man
Melodic Hardcore Rise Against "Revolutions Per Minute"
Today's Empires, Tomorrow's Ashes (2001)
前作でそれまでのサウンドから大きく変化を遂げた彼らが その路線は継承しつつも更に進化させ、Hardcoreへより傾倒した3rd。ポリティカルな姿勢はそのままにサウンドも完全にファニーさはなくなっており、ポップ感もなくなっているため多少の好みは分かれるかもしれない。しかし決してメロディがおざなりになっている訳ではなく、激しさの中にキャッチーさが見え隠れしている点がこの変化が肯定的に捉えられる要因であろう。また前作と異なるのは、テクニカルさやプログレッシブさが出てきている点である。3曲目のようにストレートなHardcore要素が全面に出ている楽曲であっても展開が複雑に練られており、10s以降のテクニカルさを全面に押し出したMelodic Hardcoreの先駆けとも言えるような作品である。全14曲。
☆☆☆☆★ Mate Ka Moris Ukun Rasik An
Today's Empires, Tomorrow's Ashes / Back To The Motor League
Albright Monument, Baghdad / Ladies' Nite In Loserville
New Homes For Idle Hands / Purina Hall Of Fame
Melodic Hardcore Belvedere "Fast Forward Eats The Tape"
How To Clean Everything 20th Anniversary Edition (2013)
1993年発売の1stの発売20周年を記念してリマスターの上、アウトトラックとデモを追加した再発盤。元々オリジナルの段階でも音数が少ないためそれぞれの音がくっきりとしていたが、リマスターをしたことにより少し荒々しさが取れてきれいに纏まった感はあるものの更にバランスが良くなっている。そして今回追加されたアウトトラックスは最初の段階でFat Mikeがカットした楽曲であり、20年の年月を経てようやく日の目を見た形ではあるが、決してクオリティが低いわけではない。少しメロディに彼ら独特のポップさは欠けている部分はあるが、ザクザクと刻むギターがシンプルに緩急や強弱を加えながら疾走していく楽曲であり確かに他の楽曲と比較すると浮く部分があったかもしれないがカットするまでもなかったと思えるレベルである。また、デモは全てアルバムに最終的には収録されているがこのアレンジの変化の過程を考えると次作以降のプログレ的要素の片鱗を少しだけ感じることができるだろう。全19曲。
☆☆☆☆ Pigs Will Pay / Leg-Hold Trap
Homophobes Are Just Pissed ‘Cause They Can’t Get Laid
Fast Melodic Punk ------------------------------