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Ten Foot Pole

Swill (19933)
Scared Straightより改名をしてTFP名義としては初の作品となる、また自主レーベルからリリースとなった1st。本作ではまだScared Straightの名残が色濃く残っており、スピーディな疾走感あふれるサウンドであるが、メロディックよりというよりも80sのHardcoreに強く影響を受けた所謂Melodic Punkの創世記のサウンドを忠実なまでに継承している作品と言える。音質によるものもあるがメロディの質感はのちの作品とそこまで変わりはないが、抜けてこないために若干野暮ったく感じたり、キャッチーさは皆無である。リフもHardcore的な要素を至るところで感じられつつも、3曲目のように疾走していきつつもJazz的なアレンジの構築をしていたりベースが強引な展開が多々ある中でもブンブン鳴っているところなどは、後の進化に繋がる要素の一つとして考えられるだろう。ただとにかく垢抜けずに洗練されていない点が残念なところである。全13曲。
☆☆☆ People Like You / Pete's Shoes / Home / Ultimatum
School / Man In The Corner / Racer X
Melodic Punk No Use For A Name "NRA Years"
Rev (1994)
Epitaphと契約して初めての作品であり、Scottが在籍したアルバムとしては最後となる2nd。前作の垢抜けないこもり気味の、そしてとっ散らかった印象のサウンドから一転した名盤へと成長を遂げた作品になっている。特に1曲目のイントロはそれだけでテンションを上げる破壊力を持っている。もちろんそれに留まらずに曲のスピード感も今まで以上に増しており、そしてその上を駆け抜けるメロディは軽やか且つポップであり、様々な表情を見せてくれる。また単に勢い任せの作品という訳ではなく、3曲目のように最初はカッティングなどをうまく使いながら、途中でギアを上げるなど躍動感に富んだアレンジは前作ではほとんど見られなかった部分である。その一方で前作の様な垢抜けなさやアレンジの強引さなども部分的に残っており、そういった洗練されすぎていない泥臭さ、野暮ったさみたいなものと所謂Epitaphサウンドが融合したのが今作であり、聞けば聞くほどハマっていく作品である。全13曲。
☆☆☆★★★ Never Look Back / my Wall / Old Man
Co-Song / Final Hours / Broken Bubble
Melodic Punk Face To Face "Face To Face"
Insider (1998)
Dennisにボーカルが変わって2作目となる、4th。前作ではScottとの違い、新たなTFPとしてのサウンドを生み出そうとするあまり楽曲単位では素晴らしいものもあったが、作品としては少し中途半端な印象を受けるような作品であったが、今作ではそれが完全に払拭されている。1曲目から爽快感のあるスピーディーな楽曲が並んでおり、これまでの重さ重視の作品から完全に脱却を果たしたバンドとしての新しいスタイルが詰まっている。少し高音でナヨっとしたDennisのボーカルにこの警戒に駆け抜けていく楽曲が非常にマッチしており、更にはリフの鳴り方が単音リフとパワーコードを使い分けることによって第2のメロディのように響いている。しかしポップな面だけでなく、10曲目のようにエネルギッシュかつハードに駆け抜けていく楽曲があったり、ミドルテンポの楽曲もあることによってこの対比も素晴らしい作品である。全12曲。
☆☆☆☆★ The Getaway / Hammering Out The Details / Another Half Apology
This Is But A Test / Nothing To Lose / Officer I Swear She's 19
I Won't Complain Today / Seven
Melodic Punk 3daybinge "3daybinge"
Subliminable Messages (2004)
ミドルテンポでヘビーなイントロ、メロディで今までとは少し毛色が異なるような楽曲を1曲目に置き若干の不安と共に幕を開ける6th。しかしその不安は2曲目で完全に払拭されるであろう。2曲目は緩急を駆使しながらもポップでキャッチーなメロディは健在であり、ここ数作で少しずつ変化が顕著になりかけていたEpitaph系の重厚なメロディックパンクからFAT系の軽やかなサウンドに完全に変化をしている。全体としては若干スピードは落とし気味でメロディを重視した印象はあるが、それでも第一線で活動し続けている彼ららしいメロディと疾走感はそのままでありキャリアを重ねた分の円熟味や渋さが滲み出ている作品である。またそのような変化を基調としながらも1曲目のようなヘビーロックであったり、11曲目のようなカントリーテイストをメロディックサウンドで解釈し直したかのような新鮮さを感じるサウンドがあったりなど、様々な曲調が並んでおり、今まで以上に多様化している。これはDenisがエンジニアとしてPrinceなどを担当していることにもよるかもしれない。この変化に賛否両論あるかもしれないが、その完成度から飽きのこない作品である。全12曲。
☆☆☆☆ Kicked Out of Kindergarten / She Looks Like / Rachel Corrie
Last Call for Russell's Balls / Still Believe / Your World / The Quest
Melodic Punk Goldfinger "The Knife"
4 Way (2006)
Secondshot、locofrank、Slime Ballとスプリット。何故このメンバーの中にTFPが?と正直違和感は否めないが、そんなことは関係なく素晴らしい楽曲となっている。前作で打ち出された多少ロックぽい様な新機軸を打ち出した曲と彼ららしい、いやむしろDenisらしい曲と、これまでの彼らの集大成のような2曲が収録されている。前作とメンバーが替わっており、それも前作で打ち出された新機軸を突き詰めている要因となっているだろう。今作での2曲は良い意味で対照的な楽曲と言えるかもしれないが、彼らに関して言えばどんな楽曲であろうともDenisが歌うことによってTFPっぽさが出ると言っても過言ではなく、これこそが彼らの持ち味であるだろう。この先どのような作品を出してくるか分からないが絶対にTFPらしさは失うことはないだろう。全2曲。
☆☆☆★★ Sunset / All I Know
Melodic Punk ------------------------------
Setlist (2017)
前作リリース後に完全に沈黙していた彼らが突如復活を果たしてリリースした約13年ぶりの作品であるが、ジャケットにはこれまでの作品のアートワークが使われていることからも分かるようにライブを意識した、ベストと言っても良い作品である。選曲も2nd以降から比較的まんべんなく選ばれており、更には決して過去作からそのまま収録している訳ではなく、全曲再録となっているため活動休止期間はあったものの、現在の彼らの姿がこの作品には込められている。年月を重ねた分Dennisの高音のボーカルにも円熟味と哀愁がより加わっており、速さの中にも落ち着いた安定感を感じられる。オリジナル作品ではPulleyのScottが歌っていた2ndも3曲ほど収録されているが、本来の楽曲が持つ力強さは残しつつもDennisのボーカルの良さも生かされており、違和感なく仕上がっている。また、新曲も2曲ほど収録されているなど過去を踏まえつつもバンドの現在進行系の姿がこの作品には込められていると言えるだろう。全13曲。
☆☆☆☆ ------------------------------
Melodic Punk ------------------------------
Escalating Quickly (2019)
オリジナルアルバムとしては約15年ぶりとなる7th。本作はDeath By StereoのDan PalmerやAtreyuのDan Jacobs、Good RiddanceのSean、LagwagonのJoeなどを迎えて制作をされた、ある種Dennisのソロに近いとも言える作品であるが、これまでの路線とは少し異なっているため賛否両論を呼ぶ問題作とも言えるだろう。Dennisの高音のボーカルが生み出すメロディは元々ポップ感が強く、これまでもそういった面を打ち出していた楽曲や作品はあった。しかし今作ではプロデューサーでもあるRyanが手がけたキーボードが大々的に取り入れられ、その分疾走感が全体的には失われたことが違和感の元凶であろう。従来までの雰囲気が残っている箇所も部分的にはあるが、メロディがポップになりモダンな音色のキーボードやリズムとメロディが一体化してしまうことによってメロディが前に出てこないのが残念でならない。しかし何と言っても疾走感がまるでないところが最大の波紋を呼ぶところである。
☆☆☆★ Everything Dies / Forever Road / Long Night
The Jackals / Unbroken / Goodbye Sunny Days
Melodic Punk The Wonder Years “Get Stoked On It“