thewarpedradio

Thrice

Identity Crisis (2001)
Screamoというジャンルを作り出したバンドの一つとも言えるだろう、彼らのDemoに続く記念すべき1st。しかしEmoの要素は少なく、ミディアムナンバーもあれば高速メロディックもあり、絶叫系の美しさを持った楽曲もあれば少しポップ寄りの明るさを基調とした楽曲があったりとかなり振れ幅は大きい。そしてほぼ全部にスクリームが入ることにより、東海岸のHardcoreに影響を受けたかのようなエモーショナルなメロディがより一層引き立っている。そこに重く刻んだリフを中心に、テクニカルさをも出したギターが絡むことによってまだHardcore色の強いメタルではあるが、それが作品全体への統一感にも繋がっていると言えるだろう。3曲目のようにボーカルに少し若さを感じる部分や全体的にもアレンジやリフも稚拙さが残るが、そういった青さが叙情感と相まって荒々しい暴力性や激しさの中にもある種の荘厳な美しさを感じる作品である。全11曲。
☆☆☆☆ Identity Crisis / Phoenix Ignition / To What End / As the Ruin Falls
A Torch to End All Torches / Under Par
Melodic Hardcore A Day To Remember "For Those Who Have Heart"
The Artist In The Ambulance (2003)
これまでのメタリックな要素を残しながらも大きくスケールアップした3rd。今までのMetalの要素は表面上少なくなり、ダイナミックさが前面に出た作品となっている。しかし彼らの魅力である叙情的なメロディやドラマティックな展開はこれまで以上に緻密に作り上げられており、今後の彼らの転換期となった作品とも言えるだろう。元々はメロディと共にメタリックな展開の印象が強い彼らではあったが今作ではそれを払拭し、根底にあるMetalやHardcoreの要素はそのままにしながらも、新たにemo特有の叙情性やきらめき、そして激情を完全に飲みこみ咀嚼しきっている。前作までの様式美的なものは若干薄まった傾向にはあり、どちらかと言うとシンプルな展開が増えてはいるが荒々しさは今まで通りである。前作までと比べるときれいにまとまっているようすら感じられる部分もあるが、そのエネルギーはメタリックなフレーズなどに拘らなくてもより楽曲の内面に盛り込まれている。この両極端とも言える様な相反する要素を絶妙なバランス感で成立させているのが今作であり、前作にも負けずとも劣らない名盤である。全12曲。
☆☆☆☆★★ Cold Cash And Colder Hearts / Under A Killing Moon
All That's Left / Silhouette / Stare At The Sun
Hoods On Peregrine
Screamo Darkest Hour "Undoing Ruin"
Vheissu (2004)
大きくサウンドを変化させた前作でシーンの中で盤石の地位を築きながらも、更にこれまでよりも劇的に変化を遂げたある意味問題作であり、この先の試金石となるような4th。これまでのMetalとHardcoreが折衷した激しさや勢いが同包したサウンドは完全になくなり、その代わりに前作でも見られたプログレ的、Math Rock的なアプローチが主体となり穏やかで荘厳な雰囲気に包まれている。しかし初期衝動的な勢いは完全に影を潜めているが、激しさが完全に失われたというわけではなく、どこか冷静さの裏に見え隠れするような計算された激しさや熱量を感じる。ただ動の部分が強い訳ではなく、むしろ激しさがあるからこそ静がより強調されているかのような作品である。この静と動や陽と陰などが同居しつつもマイナス方面の要素が強い今作は実験的かつ叙情的でありながらも、そこに込められた圧倒的なまでの熱量は前作までに引けを取らない。音か構築する世界観を突き詰めすぎた結果、これまでとは異なる方向性へと転換を遂げたが、彼らにしか作れない音がこの作品には込められている。全11曲。
☆☆☆★★★ Image of the Invisible / Between the End and Where We Lie
Atlantic / Hold Fast Hope / Like Moths to Flame
Of Dust and Nations / Stand and Feel Your Worth
Post Hardcore Brand New "Daisy"
Anthology (2012)
2012年に活動休止を発表し、その年の5月から6月にかけてのFarewell Tourでの演奏をまとめた2nd Live Album。一つのライブをまるごと収録している訳ではないので楽曲が全てシームレスに繋がっているとは言えない部分もあるが、1stから8thまで全ての作品からバランスよく選曲されている。そして作品ごとに進化、深化を遂げていった彼らであり、それぞれで楽曲の持つ質感は大きく異なっているが、本作ではどれもが一つのベクトル上にまとまっており、激しさの中にも統一感すら感じられる。元々がメタリック要素の強い初期の楽曲は力強くもスピードを若干控えめにしてメロディを前面に出し、Post Hardcore要素が強くなった4th以降の楽曲はライブであることもあってテンポ感はそのままでありながらも荒々しさが入り込むことにより、似て非なるそれぞれがThriceというフィルタを通して一つのライブ、作品にまとまっている。バンドとしての変化はサウンド上のものであり、これは本質は変わっていないことの証明であろう。全24曲。
☆☆☆★★★ ------------------------------
Post Hardcore Silverstein "Decade"