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The Ataris

Looking Forward To Failure (1998)
前作のあとにKrisがインディアナからカリフォルニアに引っ越しをしたことに伴い、メンバーがいなくなるなどバンドとして苦しい時期を送っていた彼らが、FATと契約を果たし一気に知名度を押し上げた1st EP。彼らの代表曲であり、どんなに年月を経ても色褪せない大名曲である1曲目が初めて収録されたのが今作であるが、それ以外にも2ndではアコースティックで再録された4曲目がバンドサウンドであったり、Blink-182のMarkをゲストに迎えた6曲目は初期のパンキッシュな荒々しさを残しつつもメロディにエモーショナルさが加わるなど、1stから2ndにかけてのある種劇的な変化を遂げる彼らの変化の隙間を埋めるミッシングリンク的な立ち位置の作品と言えるだろう。そして何よりも今作では洗練され、エモーショナルで青臭くも力強いメロディが非常に心地よい。全6曲。
☆☆☆★★★ San Dimas High School Football Rules / My So Called Life
My Hotel Year / That Special Girl
Melodic Punk Cooter "All Bets Off"
Blue Skies, Broken Hearts ... Next 12 Exits (1999)
3ピースのシンプルで勢い重視の楽曲に別れを告げ、彼ら独特の世界観を確立させた2nd。この作品はジャケットから推測できる音、更には日本盤の帯にある言葉、『そこにはいつも青空があった』のみで全ては語りつくせるだろう。1stでJawbreakerのカバーをしていたことからも窺い知れるように、元々のルーツとして持っていたエモーショナルなメロディを前面に出しつつも前作のような荒々しさも残っており、そのバランス感覚が素晴らしく完全に一皮むけたような作品である。シンプルながらもメッセージ性が強い1曲目を皮切りに、メロディの節々から迸るかのような青さはemo的でもあり、しかしその根底には純粋無垢なメロディックパンクの要素がしっかりと表れている。荒々しさが若干残りつつも瑞々しいメロディが彼ら最大の持ち味であり、この激しくも青々しく爽やかなメロディやクリスの声は前作では感じることができなかった部分であり、彼らの人気を不動のものとしたきっかけと言える名盤である。また前作までの流れを受け継いだ疾走感のある楽曲の完成度は言うまでもなく、今作では甘酸っぱく歌い上げるミドルテンポの楽曲の完成度が高く、後の作品から考えればまさに過渡期の作品ではあるがバンドとしての初期衝動と甘酸っぱさが良いバランスでまじりあっている1枚である。全14曲。
☆☆☆☆★★ Losing Streak / 1*15*96 / San Dimas High School Football Rules
Your Boyfriend Sucks / I Won't Spend Another Night Alone
Choices / Better Way / My Hotel Year / In Spite Of The World
Melodic Punk Jawbreaker "24 Hour Revenge Therapy"

Let It Burn (2000)
人気がうなぎのぼりであった彼らと、当時はまだまだ無名であったUseless IDとのスプリット。今作ではどちらのバンドも甲乙付け難いほどに名盤である。最初の4曲は彼らにしては珍しく勢いに任せた疾走感満載のショートチューンであるが、1stの頃の様な粗削りでも2ndの洗練さでもなくその中間を行くような楽曲が揃っている。しかし冒頭だけでなく5,6曲目もテンポが落ちることなく一気に高速で駆け抜けている。のちの3rdに別バージョンで収録されている2,6曲目はある意味でもと言ってもいいかもしれないがその分曲の、メロディ良さが純粋に味わえる。個人的にはこの作品のバージョンの方が好きなくらいである。7曲目はモトリークルーのカバーであり、アレンジはほぼ原曲通りであるが、テンポが倍速くらいになっており溢れんばかりのエネルギーを感じることができる。8曲目は2ndにも収録されている彼らの代表曲のアコースティックバージョンは原曲の雰囲気をそのままによりエモーショナルになっている。この作品はUseless IDに喰われたと専らの評判ではあるが、決してクオリティでは負けているようには感じず、むしろ彼らの作品の中でも1,2を争うような名盤であると個人的には思っている。なお2ndのタイトル曲はなぜかこの作品に収録されている。全9曲。
☆☆☆☆★★ The Radio Still Suck / Song For A Mix Tape
Blue Skies, Broken Hearts... Next 12 Exits / Let It Burn
How I Spent My Summer Vacation / On With The Show
Melodic Punk Useless ID "Let It Burn"
End Is Forever (2001)
Useless IDとのスプリットの曲が一部リアレンジされて収録もされている3rd。1st〜2ndと大きくサウンドを変えてきた彼らではあるが、今作も同様に前作での変化を踏まえながらもまた新たなサウンドへと変化をしている。前作ではエモーショナルなメロディが前に出つつも1stのような疾走感も残っている楽曲が多かったが、今作ではよりメロディを重視して青臭いメロディが全面に押し出された楽曲が並んでいる。それを大人しくなったと解釈することもできるだろうが、ザクザクと刻むギターのフレーズは根底にあるEmoだけではなくMelodic Punkもきちんと感じさせてくれる。単に青臭く甘酸っぱいメロディを重視するためによりダイナミックに、エモーショナルになった結果であろう。作品全体として夏を強く感じさせるが、盛夏というよりも少し秋をも感じさせる熱さ(暑さ)に少しの爽やかさをブレンドしたかのような、そんな季節感すら感じさせてくれる作品である。全14曲。
☆☆☆★★★ Giving Up On Love / I.O.U. One Galaxy / Bad Case of Broken Heart
Up, Up, Down, Down, Left, Right, Left, Right, B, A, Start
Song For A Mix Tape / How I Spent My Summer Vacation
Teenage Riot
Melodic Punk Gameface "Every Last Time"
All You Can Never Learn Is What You Already Know (2002)
4thの先行シングルとしてオーストラリアで発売されたEP。アルバムでも重要な位置にある1曲目は言うまでもなく、それ以外の楽曲も彼らの持ち味が遺憾なく発揮された楽曲になっている。しかし1曲目を除き全ての曲がデモかつアコースティックであり、Krisの自宅やツアー中のホテルで録音されているものもあるため6曲目などは音質的には良いとは言えない部分もあが、単にアコースティックというだけでなく、5曲目ではピアノを入れ込んでいたりなど作り込まれている。そして余計な音色が少ない分、Krisの力強くも青さあふれるメロディが生々しく響いてくる。また5曲目はSmoking Popes、3曲目はオーストラリアのLo-Telのカバーであり、オリジナルとはメロディの質感は当然異なるもののやはりKrisの声がバンドの中核を担っていることを再確認できる作品である。全6曲。
☆☆☆★ Takeoffs And Landings
Acoustic ------------------------------
So Long, Astria (2003)
前作でメロディを重視したサウンドになり疾走感は少し薄れた部分があったが、2ndと3rdの雰囲気をどちらも残して大躍進を遂げたメジャーからのリリースとなった大名盤の4th。作品を重ねるごとにEmoさを全面に出してきた彼らではあるが今作ではそれに加えて疾走感と力強さが戻ってきている。特に冒頭3曲の流れや完成度は完璧である。青臭く甘酸っぱさ満載のメロディと併せて歌詞も非常に具体的でありつつも叙述的であり、文学的な雰囲気をも漂わせている。また、アレンジも気温は高くても湿度が低い分汗をあまりかかないというカリフォルニアの盛夏から晩秋にかけての空気感や青空感を作品全体で表現しているような統一感に溢れている中で、キーボードを押し出した6曲目や数多くのバンドもカバーしている10曲目の原曲の雰囲気をそのままによりエモーショナルに仕上げていたりなど、様々な感情や空気感をジャケットやインナーも含めてリアルにパッケージしたこの時代を代表する1枚である。全13曲。
☆☆☆☆★★ So Long, Astoria / Takeoffs And Landings / In This Diary
My Reply / The Saddest Song / The Boys Of Summer / Radio #2
Melodic Punk The Tank "Remodel"
All Soul's Day & The Graveyard Of The Atlantic (2010)
前作では新たな一面を提示したが、そのあまりにも大きな変化のために首をかしげてしまった人も多いであろうと思われる程にある種問題作であった5thから考えて3年。彼らに求めていたのはこういう世界観なんだと声を張り上げたくなるほどに、彼ららしい楽曲のみが詰まった待望の復活作。2nd3rdの頃の様な彼ら独特、かつ特有の明るくからっとしたメロディとシンプルなギターワークは、CAの景色や空気感を彷彿とさせるかの如く叙情的である。しかもその中には4thの頃の様な明るさの中にも若干の憂いさをも兼ね備えたこれぞThe Atarisと言える様な2曲である。そのためある意味今までの彼らの集大成の様な楽曲ではあるが、これからの彼らの布石ともなるような、そんな1枚となっている。ミックスもほんの少しだけこもっているように感じるが、それが彼ら独特の雰囲気をより強調していると思うのは気のせいだろうか。全2曲。
☆☆☆★★ All Soul's Day / The Graveyard Of The Atlantic
Melodic Punk Day By Day "The Endless Battle"
October In This Railroad Earth (2016)
新作制作が長期間に渡っている彼らが突如Bandcamp上で発表したEP。レコーディング自体は前作のシングルと同時期ではあるが、楽曲の元々の製作時期は90s初期であり、The Ataris結成以前であることからも窺い知れるように2nd以降の青臭いメロディは所々にあるものの、全体的には1stの頃のような荒々しさが残っている楽曲が目立っている。彼のルーツの一部を示すかのような余計なものを一切省いて8ビートでシンプルにパンキッシュにまとめ上げているところからは懐かしさを感じさせる。また収録曲自体もKrisがThe Ataris結成以前にやっていたバンドのカバーである1曲目や、当時のシンガーが書いた5曲目などKrisのメロディとは異なる楽曲も収録されており、彼自身のキャリアや歴史の1部に触れるようでそういった意味でも興味深い作品である。全6曲。
☆☆☆★ Slacker Rock / Trash Panda / Peel Sessions / Silver Turns to Rust
Melodic Punk ------------------------------
Silver Turns To Rust (2017)
アルバムを出すと言い出してからが長く、未だにリリースされない彼らが新作に収録予定の4曲と、October In This Railroad Earthを丸々、そして未発表曲に当たる新曲のデモを2曲収録したアルバム。新作に収録予定の4曲のうち2曲は既にリリースされているため、純粋なバンドサウンドでの新曲は2曲と若干物足りなさは残るものの、復活以降ライブは継続しており、2nd〜4thの流れを組みつつも現在の彼らのスタンスを体現するかのような青臭いメロディでありつつも少し枯れた哀愁さを漂わせている。ラスト2曲は完全にデモ段階であり、アコースティックではあるがメロディ自体の良さは十分堪能でき、バンドサウンドで聞くのが非常に楽しみな楽曲であるが故に早く正式な6thアルバムとしてのリリースが期待される。全12曲。
☆☆☆★★ All Soul's Day / 12.15.10 / The Graveyard Of The Atlantic
Slacker Rock / Trash Panda / Peel Sessions / Silver Turns to Rust
Melodic Punk ------------------------------
Live In Chicago (2020)
新作が待ち焦がれている彼らが出した2019年に地元で開催したライブを収録したライブ盤。所々でChrisのソロが挟み込まれていることからもわかるように現状としてはThe Ataris=Chrisということを色濃く印象づける作品ではあるものの、比較的王道かつ全盛期の作品から多く選曲されている。またライブならではの荒々しさはあるもののアレンジはスタジオ盤と大きくは変更されておらず、違いとしてはテンポ感に依る部分が大きい。特に9曲目はMCでも言っているが原曲と比較すると圧倒的なまでにテンポが上がっている。またChrisのソロもほぼシームレスに挟み込まれているため、多様なライブの形態の中での一つとして楽しむことができる作品である。全15曲。
☆☆☆★★ ------------------------------
Melodic Punk ------------------------------