TOTALFAT
First-Demo-Tape (2000) | |
結成間もなくリリースされた彼らの初音源。バンド初期特有の影響を受けた音そのままの、良くも悪くも青臭さ満点の作品である。演奏や詩なども下手なわけではないが、決して秀でているわけでもない。またこの頃はメタルの要素はまったくなく、当時の彼らの好みがわかるような典型的なMelodicPunkとなっおり、アレンジもかなりシンプルである。しかし2曲目のような跳ねるリズムを取り入れている楽曲が合ったりなど、この頃から音に対して貪欲な姿勢を感じることができる。そして何よりも彼らの良さの一つであるメロディは現在と比べても決して見劣りしない程に完成されている。特にSkaを取り入れた3曲目は名曲であり、歴代の彼らの曲の中でもトップクラスの完成度である。全3曲。 | |
☆☆☆★★★ | good-bye and see you / Summer Sonic |
Fast Melodic Punk | ------------------------------ |
the First Anniversary of TOTALFAT (2001) | |
結成1周年を祝う形で発売された彼らの2ndDemo。今作では前作とは違ってややPopPunkよりの楽曲が揃っている。しかしすべての面でクオリティは格段に向上しており、メタリックだったり、ツインギターを強調したアレンジにはなっておらず前作と同様シンプルなアレンジではあるが、後に見せるような彼ららしさが所々に感じられるようになってきている。この作品には初期の彼らの代表曲であるNextYearが初めて収録されているが、後の作品とは歌詞やアレンジが異なっているために、聴き比べるのも面白いだろう。他の3曲はこの音源でしか聞くことはできないが、今聞いても決して色褪せない普遍的なポップなメロディである。特に3曲目と4曲目はシンプルながらも名曲であり、この音源でしか聞くことができないのはもったいない。全4曲。 | |
☆☆☆★ | Next Year / Go On A Trip / Child |
Fast Melodic Punk | ------------------------------ |
The Punk Rock Split (2002) | |
同じ八王子を中心に活動していたLowbrowとのSplitであり、それぞれ6曲ずつ提供している。この頃辺りから"the newschool melodic skate punk"という言葉を掲げており、その言葉通り今までとは一線を画した多少メタル的な要素を取り入れた楽曲が増えてきている。新しい要素を取り込みながらも根底としてメロディの良さは何も変わっておらずに、自分たちのやりたいことが徐々に明確化してきており、ルーツを大切にしながらも自分たちの感性で良いものを柔軟に取り入れる姿勢がこの頃から飛躍的にクオリティを格段に向上させていると言えるだろう。10代でこの域にまで達したことは驚き以外の何物でもないだろう。この作品からアルバムに4曲再録されており、このことからも彼らの作り出す楽曲のポテンシャルの高さが既にこの時点で証明されていると言えるだろう。なお、KubotyはLowbrowにギターボーカルとして在籍していた。全6曲。 | |
☆☆☆★★ | Nothing But / Thank You / Shoes / Next Year |
Fast Melodic Punk | ------------------------------ |
Split w)Milk Robber (2003) | |
タイトル通り2003年春のツアー限定の岡山出身のMilkRobberとのSplitDemo。1曲目は後のアルバムに収録されるが、2曲目は単独作品には収録されておらずVAでのみ聞くことができる。そしてこの当時からMelodicPunkをベースにしながらもその枠を良い意味で少しずつ本格的にはみ出して純粋に良い音楽、良いメロディを追求しだしている感がある。全2曲。 | |
☆☆★ | The Plating Sky / I'll Make Your Heart Scrap |
Fast Melodic Punk | ------------------------------ |
Demonstrating CD-R From 1st Album (2003) | |
アルバム発売直前の2003年夏ツアー限定のアルバムからのDemo音源。コレには珍しくOneBoxのAcousticVersionが収録されている。基本は原曲に忠実になっているが、Joseのアレンジセンスが光るような演奏になっているのので、その点だけでも聞く価値のある作品である。全2曲。 | |
☆☆☆★ | One Box(Acoustic) |
Fast Melodic Punk | ------------------------------ |
End Of Introduction (2003) | |
2003年に発売された彼ら初の正式な単独音源。今までのリリース作品から選び抜かれた楽曲と、新曲がほぼ半分くらいの割合となっており、タイトルが示すとおりこれまでのTOTALFATの総決算的な音源となっており、この当時の彼らの全てを注ぎ込んだ作品となっている。Shunが「正式な初音源だから勢いを出したかった。」と語っているように色々な音楽を自分たちなりに消化しつつも等身大の自分たちを素直に表現している音であると思う。完全に初期衝動の塊であり、バンドの初期にしか出せない勢いに溢れている。しかしアレンジは疾走感があふれつつもタイトであり、ShunとJoseのメロディの絡みも今まで以上にきれいである。楽曲の幅もMelodicPunkを中心にしながらも、高速一辺倒ではなく自分たちが良いと思われることはなんでも取り入れていく柔軟な姿勢はこの当時からである。まさに彼らの憧れである西海岸的な匂いが随所に感じられ、ようやく本当の意味での自分たちの音を確立したAlbumと言えるだろう。全くタイプの違うギタリストによる対照的なアレンジにも注目である。全13曲。 | |
☆☆☆☆★★★ | Highway Goin' / Hope From 3rd Rated Life / One Box Nothing But / Plating Sky / Thinkin' About Our Way / Next Year After The Show / I Follow You |
Fast Melodic Punk | Craig's Brother "Homecoming" |
Get It Better (2005) | |
アルバムから若干間が空いてリリースされたMiniAlbum。前作リリース後に全国をツアーしてその中で生まれたものを素直に出した作品であろう。MelodicPunkをベースとしながらもメタルやハードロック、エモなど様々なエッセンスを取り入れ音楽的な幅を大きく広げた作品であり、意欲作と言えるだろう。製作時には5人編成であったため、トリプルギターであることを活かしたアレンジはかなり新鮮である。しかしその中では少しメロディがギターに負けて抜けてこないなどの消化不良感も多少ある。前作のようなメロディックな曲も、音数が多くて重さもあることからどことなく全体的に疾走感が失われていることは否めない。彼らの作品の中では賛否両論となる作品であるかもしれないが、彼らの本質は何も変わっておらずに2人のボーカルの絡みも素晴らしく、もっと彼らの中で消化されれば大きくまた新たに成長を遂げることを期待させるような過渡期にある作品と言える。全7曲。参照インタビュー | |
☆☆☆★ | Generations Ever Last / Not To Retire / Red & Yellow Leaves Something Wrong With Me / You're All I Need |
Melodic Punk | A Change Of Pace "An Offter You Can't Refuse" |
When The 8th Spring Has Come... (2005) | |
前作から1年と間をおかずに発売された盟友fbfwとのSplit。前作が1stAlbumと大きく異なっていたために、どんな楽曲を収録してくるのか楽しみであったがこれまた彼ららしいメロディックを基本とした楽曲となっている。前作では幅を広げた感があったが、今度は過去を全て包括しきちんと地に足をつけて制作されたことがよく分かる。3曲共にそれぞれ異なったタイプの曲ではあるが、全てが彼ららしいキャッチーで暖かい雰囲気の3曲である。2人のボーカルの絡みは減ったような気もするが、それぞれのスタイルが徐々に確立してきたようにも感じられるため不思議と統一感がありバラバラな感触を全くと言っていい程感じない。何処か懐かしさを覚える1、2曲目、自らの土台の上に新たな面を付け加えて大きくバンドとして成長したことを見せつけてくれる3曲目といい、何か過去を踏まえて彼らの現在・そして今後を集約したような作品である。これぞTOTALFATであり、前作があったからこそここへたどり着いたのだろうと自信を持って言え、万人にオススメ出来る作品。全3曲。参考インタビュー | |
☆☆☆☆★ | Tonight / The Frame Of Youth / Fight Against Yourself |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Hard Rock Reviver (2007) | |
スプリットを挟み、単独作品としては約2年振りとなる彼ら初のCover Album。収録されている曲はそれぞれのバンドの代表曲とも言えるべき有名な楽曲ばかりであるが、単に速くしておけばよいというような安直な発想ではなく、先人たちへのリスペクトを込めて原曲の良さを生かしつつも彼ら自身のフィルターを通した作品となっている。今作では原曲のキーが高いせいか、Joseがメインになっている楽曲が多く収録されているために、若干今までとは表情が変わったという印象を受ける。しかし彼ららしい疾走感あふれるアレンジには好感を持てるだろう。そしてメタルやハードロックの要素を彼らなりの解釈で彼らは以前よりルーツや背景をまでも気になったら自分から触れていって欲しいと言っており、それを自らがリスナーに対して示したものが今作であると言えよう。全8曲。 | |
☆☆★★ | ------------------------------ |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Hello & Goodnight (2007) | |
長い間待たされた感があった1stEP。今作では現在進行形である彼らのサウンドの中で、まさに今をそのまま切り取ったような作品であり、今までで一番明るいサウンドであり、彼らが元々持っていた青臭さは残しつつも等身大のきらびやかさを持っている。前作からその兆候はあったが、Joseがメインを取るようになってきており、それも相まって今作の狙いである今までで一番Popな作品になっていると言えるだろう。アレンジ自体も基本はシンプルでありながらもきちんとツボを押さえており、特にリズム隊の手数が多い中での安定さは素晴らしいものがあるのではないだろうか。クオリティが上がった分若干きれいにまとまりすぎており、今までに持っていた荒々しさがナリをひそめてしまったように感じるのが残念であるが、その反面メロディやアレンジ力などその他の面では飛躍的に向上しており、今作を元にしてどのような作品をもって彼らがどこへ新たなステージを求めて、扉を開いていくのか今後にかなりの期待を持たせてくれる作品であると言えるだろう。全5曲。 | |
☆☆☆☆★ | Time To Wake Up / Show Me Your Courage / Magic Word Hello & Goodnight |
Melodic Punk | Wishful Thinking "Kicking Goals, Banging Gongs And High Fives All Round" |
All The Dreamer, Light The Dream (2008) | |
約4年ぶりの2ndFull。上のEPの延長線上に位置しているが、この4年間で様々な音楽に触れ、吸収した上で自らの原点を見詰め直し、更にそれを先に進めたような作品である。そのために1stに比べてテンポや空気感のメリハリに優れており、過去最高の疾走感にあふれた作品である。これは手数の多いドラムと様々なフレージングを行いながらも安定したベースがボトムをしっかりと支えているためであろう。それがあるからこそ性質の性質の違うギターフレーズが生きてきているのではないだろうか。また彼らの作るメロディが高音の声質に合っており、決して独創的なことをやっている訳ではないが彼ららしさをいかんなく発揮した作品であると言えるだろう。しかし個人的には異なる声質のボーカルを生かす曲が減ったことと、Shunのどこか暗さを秘めた8曲目のような楽曲が最近ないことが残念である。しかしそれは個人的な好みの問題であり、今作ではまさしく新たなステージへと上り詰めた感がある作品に仕上がっている。全11曲。 | |
☆☆☆☆★ | Da Na Na / Starting New Life / Track Back(To The Rads) / Tonight The Day While Been Greenhole / It's Not Just Like Love Comedy I'm Not |
Melodic Punk | Amber Pacific "The Possibility And The Promise" |
For Whom The Rock Rolls (2009) | |
前作より約1年でのリリースとなり、現在のバンドの状態を物語っているようなハイペースでのリリースとなり中身も非常に意欲的な作品となっていると言える3rdAlbum。個人的な視点では今作の最大の特徴は良くも悪くもこれまでの彼らとは異なり、日本人の音からは脱却したしたことであろう。今までの彼らは様々な要素を消化しつつもどこかメロディや醸し出していた空気感は他のバンドも持ち合わせている、一聴してすぐにわかる日本人らしさを兼ね備えていた。これは当然のことではあるが、今作ではメロディラインや楽曲の完成度など全ての面で完全に無意識化にある日本という枠を取り払った作品である。個々の楽曲全てに様々なMelodic Punkの要素をさり気なく織り込ませていつつも、彼ららしさを兼ね備えており相変わらず抜群のバランスでのアレンジと言えるであろう。そのため1枚を通して非常に多種多様な色合いを持たせていながらも統一された印象を受ける。しかしその一方で個人的には元々持っていたメロディのインパクトが今作では若干弱いとも感じられる。非常にまとまっている分個人的にはずっと耳から離れないようなメロディがこれまでの彼らの中では少ないように感じられた。それが良くも悪くも脱日本化にも繋がっているのではないだろうか。しかし前作がそうであったように今作品を通過点としてまた新たな、大きな姿・作品を次作では見せてくれるだろう。全14曲。 | |
☆☆☆☆ | Good Fight & Promise You / Just For What / Dear My Empire Highway Part2 / Fall Into Deep / Anthem Of The Bedroom / Over Driving Force / Rainbow / Story Teller |
Melodic Punk | Mighty Midgets "Raising Ruins For The Future" |
Over Drive (2010) | |
ハイペースでのリリースが続く彼らの4th。そして今作より本格的にメジャーへと活動の場を移した記念碑的な作品でもある。今まで外部プロデューサーを置く事はなかったが、今作からは岡野ハジメ氏を迎えて製作されている。その影響がどこまであったのかは正直わかりかねる部分もあるが、一つ一つの音、特に低音の形が非常にくっきりとしている。一つ一つのアレンジはシンプルに余分なものをそぎ落としたように聞こえるが、聞き込めばかなり細かい事を行っており、相変わらずの彼ららしさを残しており、安心して聞ける作品である。個人的には元々持っていた武器を今まで以上に上手く活かした作品であるように感じる。まずはJoseがメインで歌う曲がかなり多くなっており、元々のハイトーンにも磨きがかかり、より丁寧に歌を伝えようとする姿勢が増したように感じる。個人的にはShunがメインの曲がもっと欲しいというのはあるが、それを差し引いたとしても良い作品であることには変わりない。また様々なジャンルの要素を取り入れており、それぞれのベクトルは曲ごとに多種多様になっているがどの曲でも芯が、軸がしっかりとしており、どんなアレンジであってもTFの曲であることが分かる所は、当初からのブレのない彼らの良さであり、ソングライティングが今まで以上に充実している事を物語っている。それが彼らの大衆性・普遍性へと繋がっているのであろう。同じ場所にとどまらず、絶えず進化し続けるある意味彼らの真骨頂が存分に表れた作品。全14曲。 | |
☆☆☆☆ | Invention~Good Morning, My Treasures~ / Ryan, Don't Worry Summer Frequence / Sacrifice / The Roundabout The Wonderful World / In Your Hands / Smile / Hide And Seek One Last Time, I'll Try To Be With You / Over Drive |
Melodic Punk | Autopilot Off "Looking Up" |
World Of Glory with Joe Inoue (2011) | |
5thAlbumに先行する形で発売となった彼ら史上初のシングル。しかも以前から彼らの制作に関わっていた井上ジョーとのコラボとなっている。それだけである意味ふっきれた、でも彼ららしい作品となっているが、それ以上に歌詞が日本語になっている部分もあるのが今までの彼らにはない新しい一面となっている。それだけではなくラップを取り入れていたりと、色々な面で今までにはない新しいことを導入した意欲作であるが、それでも彼らの芯が全くぶれていないのは彼らの強みであろう。楽曲も前作の延長線上にあり、非常に聞きやすく耳に残る。また日本語を取り入れていると言っても言葉遊びの要素も強く、日本語をそこまで前面に出していないことも彼らの持ち味を生かすことになっている様に個人的には感じる。今後の彼らの試金石となる作品になるであろう1枚。全2曲。 | |
☆☆☆★ | World Of Glory / Don't Cry |
Melodic Punk | ------------------------------ |
DAMN HERO (2011) | |
メジャー2作目となる5thAlbum。前作ではちょっと個人的にはきれいにまとまりすぎている部分も感じた所もあったが、今作では良い意味で大きく突き抜けた作品となっている。元々は西海岸の音にあこがれていた彼らであるが、今作ではそのルーツは踏まえつつも日本人にしか出せない音を体現していると言っても良いのではないだろうか。音から感じられる景色・情景は日本の夏のようであり、そこから感じられる迸るほどのエネルギーは、言いかえれば彼らが追い求め体現してきた前向きな姿勢である。彼らが追求してきた音がこの作品で一つの到達点に達したと言ってもよいのではないだろうか。王道のMelodic Punkを主体としながらもメタルやポップさ、シャウトなど要所要所で肉付けされている彼らの音は、これまで以上に自由度に溢れている。元々この要素があったが、今作ではより自由で開放的なサウンドとなっている。それをより研ぎ澄ましあらゆる方向に突っ切っているからこその、前述の様な外向けのエネルギーに満ち溢れた作品である。今作をもって彼らの第1章は幕を閉じ、新たな世界へと幕を開ける印象を持たせる程に、この作品が持っているエネルギー、意味は大きい。全15曲。 | |
☆☆☆☆★★ | Livin' for The Future / Sky of California / Across The Chance World of Glory / Carry On / Highway 3 / Sweet / Longest Dreamer Revelation / See You Later, Take Care / All for You |
Melodic Punk | New Found Glory "New Found Glory" |
Place To Try (2011) | |
5thのTourFinalで初めて披露された彼らの2ndシングル。何と言っても今作の最大の特徴は、タイトル曲が日本語である事であろう。周知の通り前作のシングルでも挑戦していたが、前作では韻を多く踏んだ言葉遊びの要素が強く、聞こえ方も英語に近い部分があった。そのため今作が本当の意味での初挑戦といっても良いであろう。言語が異なっているため、もちろんメロディの聞こえ方は全く違う。その点で最初違和感を持つ人がいるかもしれない。しかし、メロディは彼ららしい。いやむしろ彼らの王道をトコトン詰め込んだような楽曲である。個人的には「らしさ」という言葉は好きではないが、自分たちの軸となる部分を全て詰め込んだのがタイトル曲であり、純粋に彼らの「らしさ」を凝縮した様な曲である。歌詞の内容に関しても日本語だから何かが変わったという事もなく、日本語である事を強調してこの作品を述べる事自体がナンセンスであると思う。また今作はシングルという小さなパッケージに彼らの良さを全て閉じ込めた作品であり、3曲目も10数年ぶりのSkaの要素を取り入れた曲など、芯をブレさせない彼らの現在を堪能できる作品である。全5曲。 | |
☆☆☆★★ | Place To Try / Take It Over / Life Is Such A Danger Flight |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Good Bye, Good Luck (2012) | |
この段階での彼らの勢いを象徴するかの様なハイペースでのリリースとなる3rdシングル。前作で日本語に挑戦しており、基本的に今作もその延長線上にある作品と言っても良いだろう。しかし今作の最大の特徴はタイトル曲のテンポ感であろう。BPMを上げて速くしようと思えばいくらでも速く出来るだろうが、歌詞をきちんと伝えたいがためにあえてこのミドルテンポになっているのだと思う。正直最初聞いた時は、彼らにしては遅いなと感じてしまった。しかし何度も聞いているうちにこれが自然な形であると思ってくる。今まではメタルの要素を取り入れるなど基本的には音を足していく手法を取っていたが、今作では全体的にシンプルな方向へと進んでいる様に思える。もちろんメタリックなフレーズは多用されているが、それよりもメロディを前面に押し出している様にすら感じる。意図しているかは別にしても、前作のアルバムから彼らのルーツの一つでもある西海岸系の雰囲気が大きく出ているが、今作ではむしろそれよりも日本の四季・光景を如実に楽曲が物語っている様に思える。それをどう捉えるかはリスナー次第であろうが、自分たちの枠を決めてしまわないことが彼らの良さの一つであり、それが今作でも大いに発揮されていると言ってよいだろう。ここ数作のシングルの流れを踏まえて、次作のアルバムでどのような姿を見せてくれるかが楽しみであり、その時に今までありそうでなかった、このタイトル曲がキーポイントになる様な気がする。全5曲。 | |
☆☆☆★★★ | Good Bye, Good Luck / Attack Or Die |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Party Party (2012) | |
怒涛のリリースラッシュが止まらない彼らの4thシングル。仮に前作が日本的な叙情を漂わせるとすれば、今作はその正反対に位置づけられると言っても良いだろう。彼らの原点である西海岸の雰囲気を彼らなりの解釈によって表現していた前作のアルバムから若干距離を置き、日本語というだけでなく音的にも新しい姿を示していたここ最近のシングルとは様相、立ち位置が異なっている。日本語と英語を上手く使い分け、メッセージだけでなく音・響きをも重視した歌詞。そして何よりも彼らの結成のきっかけともなったOffspringにも通じうる彼らなりのパーティーソングとも言えるべきタイトル曲は過去から現在まで常に自分たちのルーツも大事にしつつ、それを自分たちなりに昇華してきた彼らだからこその説得力を持つのではないだろうか。それはただの模倣ではなく彼らの持ち味であるメタリックなフレーズや、ツインボーカル、サビの部分での2ビートへの加速など彼らの持ち味を十二分にかつ自然に詰め込んでいるからこそ、音の振れ幅が大きくても常に芯が通っていると感じられる。毎回シングルでは新しい音に挑戦しそれは様々な面で成功していると言えるだろうが、個人的にはカップリングのインパクトがもっとあればより良くなるのではと思う面もある。全4曲。 | |
☆☆☆ | Party Party / Chase Mars / Always |
Melodic Punk | ------------------------------ |
L'Arc~en~Ciel Tribute (2012) | |
本作は海外勢中心のTributeではあるが、日本側からの4組のうちの一つとして参加した今作はまさに痛快であると言いたくなるほど良い意味で振り切っている。基本的にアレンジは原曲通りであり、いじっているのはイントロやアウトロ、そしてテンポが中心となっているが、そのいじり方がすさまじい。イントロの時点で彼らの持ち味の一つであるメタル要素が爆発。そしてその高速のまま一気にサビまで流れていく。それだけでも十分であるが、最後にもう一つギアを上げて駆け抜ける様は爽快である。自分たちの持ち味を十二分に出し切りつつも、原曲の雰囲気を破壊していないこのアレンジは、他のバンドのカバー以上に大きなインパクトを与えてくれる。全1曲。 | |
☆☆☆★★ | Driver's High |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Wicked And Naked (2012) | |
怒涛のリリースラッシュを締めくくる彼らの6th。楽曲の中に日本語を取り入れるようになってからの初めてのアルバムであり、それを踏まえてどのような作品になるのか、そしてそれが今後の彼らの大きな分岐点になるだろうと大きな期待と一抹の不安を共に持っていたが、結論から言えば結局何も変わっていないと言えるだろう。確かに日本語の曲がシングル曲以外にも収録されており、そういった面では今までと立ち位置的には違うアルバムである。しかしメロディの質や楽曲自体の雰囲気は変わっておらず、他のバンドのようにこれから大きく変化していくわけではないだろう。いつも通りバラエティに富んだ内容であり、その中の一つの要素として新しく日本語がある。またそのシングルが全体の流れの中で、それぞれが明確な役割を持っているように感じる。2曲目でアルバムとしての勢いを出し、4曲目で一つの山を作り出す。それがその後の彼らの本質を映し出しているようなメッセージ性の強い曲やバラード、メタリックな曲へと繋がっていく。そしてその中でも11曲目が全体を通して大きな意味を持っている様に思える。この曲がこの位置にあるからこそ、彼ら自身が今までと同様今後の先を見据えて前向きに動いていくことを暗示しているかのような、そんな流れを持った作品である。全12曲。 | |
☆☆☆☆★ | Rockers In Da House! / Place To Try / Just Say Your Word Highway Mark4 / We Rise Again / Echoes Inside My Memories Friend Never Sucks / Good Bye, Good Luck / The Naked Journey |
Melodic Punk | Slick Shoes "Burn Out" |
Seven Lives (2013) | |
怒涛のリリースラッシュを締めくくった前作から1年ほど空いてのリリースとなった、彼らの2ndMini。6年ほど前に発売されたHello&Goodnightと同じくらい重要な作品になるような、そんな感覚を覚える作品に仕上がっている。あの作品はメロディはよりキャッチーに分かりやすく、それでいて歌詞やアレンジには力強さをより強調しメタルの要素を上手く組み合わせた、相反する要素をバランスよくまとめあげる彼らの音の基礎を構築したターニングポイント的な作品であったが、彼らの音が今後大きく変化していくことを予感させるような、そんな可能性に溢れた作品である。持ち味の一つであるメタル的な要素は相変わらずであり派手なソロも盛り込まれているが、全体的にシンプルに仕上がっている。それゆえにソロであっても良い意味で自己主張が弱く、楽曲に必要な最低限の1ピースとして存在しているように感じる。キャリアや年齢的な部分もあるのか、全体的に音の角が取れて包括するかのような暖かみを感じられる作品である。また彼らのルーツのひとつである速さを1曲目以外では基本的には封印し、よりバンドとしての一体感や分かりやすさ、メッセージ性などを追及したかのような作品であり、そういった面で意欲的な作品である。1枚の作品の中で様々な武器を高次元で追い求めたこの作品を経て、彼らが次にどのような一手を打ってくるのか非常に楽しみである。全7曲。 | |
☆☆☆★★★ | Room45 / Angry Shotgun / Space Future / Wait For The Song Call It Love / R.I.P. |
Melodic Punk | The Swellers "My Everest" |
The Best Fat Collection (2013) | |
デビュー10周年を記念して制作されたベストアルバム。個人的にはベストアルバムにはネガティブなイメージを持っているが、今作ではインディーズの頃の楽曲は全て再録されており新旧問わず彼らの魅力を味わえる作品に仕上がっている。選曲も満遍なく、そして曲順も時系列に並べている訳ではないところも、彼らが今までの楽曲のどれもに自信を持っている証拠であろう。大きくアレンジが変わった曲がないこともそれを如実に表しているのではないだろうか。そして今作を一言で表すのであれば「喪失と再生」であろう。過去の楽曲を現在の彼らで新しく再構築した楽曲たちは彼らの14年の集約であり、アレンジなどは大きく変わっていないながらもバンドとしての、そして各プレイヤーとしての成長を大きく感じさせてくれる。しかしその一方で失われたものもあるような印象を受ける。これは彼ら特有のものではなく、キャリアを重ねることによりどうしても失われる無鉄砲的な勢いや瑞々しさなど、そういったある意味純粋なものはなくなってしまったことを実感させられる。個人的にはある種の寂しさを痛感する部分が本作にはある。しかしそこにネガティブな感情はなく、新曲を最後に収録していることからも分かる今後も前だけを見据えて進んでいく彼らの姿に期待したい。全20曲。 | |
☆☆☆☆ | Stabel Heart / Teenage Dream |
Melodic Punk | ------------------------------ |
夏のトカゲ (2014) | |
半年ほどの期間を空けて緊急リリースされた5thシングル。今作では初めて表題曲を歌詞だけではなくタイトルまでも日本語の楽曲にしたことにより、完全に過去の自分たちとの決別を、そして新たな方向へと進んでいく決意を示しているような作品になっている。表題曲は祭囃子という日本の和のテイストを取り入れており、元々西海岸に憧れていた彼らが和を打ち出したというところに意味があるように感じられる。元々様々モノを自分たちのフィルターを通して消化していくことに長けている彼らだけに決して付け焼刃ではなく、これはこれできちんと彼らの根本ではないにしろ、ある側面を如実に表していると言ってもいいだろう。そしてこういった和を前面に押し出すという発想に思い立った点もサウンドに対しては制約がない彼らならではのものであろう。そんな新しい一面を前面に押し出した表題曲とは対称的なB面はどちらかと言えばルーツに近い部分を現在の彼らのスタンス、言葉で表したかの様な楽曲であり、曲数自体は少ないものの内容面では盛りだくさんな作品である。全2曲。 | |
☆☆☆ | 夏のトカゲ / Save Your Days |
Melodic Punk | ------------------------------ |
COME TOGETHER, SING WITH US (2015) | |
メジャーを離れて心機一転、原点回帰を掲げてリリースされた7th。ただその原点回帰も単純に過去の姿や音にすがるのではなく、過去を正面から見つめつつもそれを現在のありのままの姿で素直に表現しているという点においてのことであり表面的なものではなく恐らく内面的な部分が大きいのであろう。一つ一つの音や言葉は日常生活から生み出されたリアリティが、そしてそれは数年前の彼らでは書けなかったであろう等身大の4人の人間の日常感、生活感に根づいているものであり、だからこそレベルミュージックという言葉には嘘偽りなく、まさに本作を象徴している。もちろん楽曲単位で考えれば元々ルールや制限がないことがルール的なバンドではあったが、今までの彼らからでは考えにくいほどに楽曲の幅は広がっており、ラップを全面的にここまで取り入れたり、リズム隊が打ち込み主体であったり、挙句の果てには持ち味のギターソロを封印している曲があるなど固定概念にとらわれることなくやりたいこと、表現したいことを素直に出している。最初に夢見た場所、サウンドに留まることも一つの美学であり初志貫徹し続けることもできるだろうが、彼らはそれを求めずに常に根底には初期衝動を保ちつつもその時々の自分たちのアンテナに引っかかったものを素直にありのままに表現し変化し続けてきていた。今作のこの全方位的なサウンドは歌詞が日本語中心となってからの数年間でアウトプットを重ねて説得力が増した言葉の重みと共に、今の彼らが表現したいことがそのまま詰め込まれているのだろう。年齢やキャリアと共にバンドとしても成熟、充実していることが実感できる作品である。全15曲。 | |
☆☆☆☆ | Moment of The Show Getting "CRAY" / Ride Your Life / Walls Run To Horizon / Start Drive / Trend Beat Maker / BxAxSxMxT This Life |
Melodic Punk | Skumdum "Skum Of The Land" |
宴の合図 (2015) | |
アルバムのレコ発初日に、アルバムに収録されていない曲をシングルとして発売するという通常ではありえない形でリリースされた今作は今のバンドの状態や勢いをそのまま体現していると言える作品に仕上がっている。表題曲はアルバムで示した等身大のそのままのリアリティを打ち出した現在の姿と、過去から現在に至るまで積み重ね蓄積してきた音が混ざり合った現段階での彼らの最高傑作とも言える楽曲である。メタリックなフレーズなどもありながらも重さはなく、全体としてはあえて音数を削っているかのように一つ一つの楽器を、特にベースフレーズを際立たせている。無駄な音を極限まで削り、その上で彼らの武器と日本独特の音階などをブレンドしている表題曲は、通常の流れから外れたリリースとなったことも必然と言えるような強烈なパワーを持っている。カップリングは秦基博のカバーであるが、こちらはどちらかと言えば彼らお得意のアレンジになっている。全2曲。 | |
☆☆☆☆ | 宴の合図 / ひまわりの約束 |
Melodic Punk | ------------------------------ |
One For The Dreams (2016) | |
7thのツアーファイナルで新曲として発表され、2017のPunkspringで無料配布されたシングル。曲の元ネタ自体は前作のアルバムにSecretTrackとして収録されていたが、それをうまく活かした楽曲になっている。シンガロング必須のイントロは楽曲の中でキーとなるメロディであり、全編に渡って使われておりほぼこれがサビになっているとも言えるだろう。全体的にはこれまでの流れを組んだ等身大のメッセージを込めた歌詞をラップまではいかないが早口で歌い回す部分も、キャッチーに歌い上げる部分といいとこ取りとなっている。そしてメロディやアレンジもそうであるが、ラッパの音を入れ込んだりなど今までの彼らにはあまりなかったスケール感が出てきており、今までを包括しつつも新しい領域にチャレンジするいつもの姿勢を凝縮した名曲である。全1曲。 | |
☆☆☆☆ | One For The Dreams |
Melodic Punk | ------------------------------ |
FAT (2017) | |
一度制作していたものを止めたりと彼らにしては制作期間をかなり長く取り、時間をかけて作り上げた渾身の8th。前作から完全に日本語にシフトしていった方向性はそのままに、それをビルドアップさせたのが今作であるといえよう。前々作からの方向性としてレベル・ミュージック、等身大の姿をそのまま表したメロディや歌詞が、今作ではより身近にあるものとして気負うことも飾ることもなく、その一方でテンションは高く良い意味での緊張感に包まれている楽曲が並んでいる。しかし収録曲は1曲目や5曲目のような2ビートで彼ら自身のルーツにも近いMelodic Punkに重点を置いた楽曲、2曲目や4曲目のようにメジャー期の作品を彷彿させるようなポップなメロディが印象的な楽曲、3曲目や11曲目のようにTF流のレベル・ミュージックを意識した楽曲、8曲目や12曲目のような比較的新基軸となるライブを意識した疾走感がありつつもポップで一体感のある楽曲など、メッセージ性は強くなり難産であったからこそ今の自分たちが伝えるべきことをTOTALFAT流のメロディで伝えているが、その中身は彼らの武器・魅力を総動員したかのような楽曲が並んでいる。ジャケットやインナーもバンドを始めた頃からの写真をコラージュしており、彼らの現段階での集大成とも言える作品であり、今作を踏まえて次作にどのような手を打ち出してくるのか非常に楽しみである。全12曲。 | |
☆☆☆☆ | R.E.P / スクランブル / 晴天 / Chase / Revenge of Underdogs 宴の合図 / Eyes / ONE FOR THE DREAMS |
Melodic Punk | Save Your Breath "Nothing Worth Having Comes Easy" |
Grown Kids (2018) | |
毎年1月に実施しているPunishers Night10週年を記念して、DustboxとNorthern19からゲストを迎えて制作されたシングル。ゲストを招いてのシングルは久々ということもあるが、それ以上に特筆すべき点は完全英詩であることである。今までのシングルで表題曲が英詩であったことはなく、このことが何を意味しているのかは今後の彼らの行動で明らかになるだろうが、やはり彼らのメロディはこういった曲でも映えることはこの曲が証明していると言えるだろう。しかし決して原点回帰を意味しているわけではなく、日本語中心にスタイルチェンジをし、それに伴い柔軟に様々な要素を取り入れて等身大の姿を作品に込めてきた今までの流れを消化した現在進行系の姿が込められている。緩急をつけながらもシームレスに流れていく展開とサビで2ビートで一気に加速する展開は彼らお得意のものであり、それがこの楽曲にも存分表現されている。またまた今作ではギターが4本であることもあるが、ギターソロやリフが聞きどころの一つとなっている。元々のメタル要素もあるが、それ以上に根底にあるのはスラッシュメタルから派生し、日本独自の要素を加えたX JAPANなどからの影響をも感じさせるリフやソロは必聴の価値があるだろう。全19曲。 | |
☆☆☆★★★ | Grown Kids |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Phoenix (2018) | |
18周年ライブ当日にリリースされた配信シングル。楽曲の系統としてはタイアップの関係もあるのかOne For The Dreamsに近く、若干スポーティ感を漂わせている部分もあるが、しかしそれはこの楽曲が持つ要素の一つでしかない。結成から1stまでの特徴であった西海岸メロディックを彷彿とさせるような英詞と展開、その後kubotyが加入したことによりメタルという飛び道具と武器を手に入れメロディとコーラスを補完しつつも主張するメタリックなリフ、2ndから3rdで速さの中に共存させ新たな持ち味の一つになったポップさ、日本語にシフトしたことによりメロディの音数も少し減り一つ一つの言葉を大切にしてきた耳に残るメロディ。そういったルーツを大切にしながらも変化を恐れずに変わり続けてきた彼らの変遷を全て入れ込んだのが本曲であり、これが前シングルと同様に試金石となり今後どのような姿を見せてくれるのか非常に楽しみである。全1曲。 | |
☆☆☆★★★ | Phoenix |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Seeds Of Awakening (2018) | |
ゲリラ的に配信された、待望の次作の先行シングル。今作でも前作での今までの武器のそれぞれを全てビルドアップする形の路線は引き継がれてはいるが、それだけに留まらない可能性や次作の方向性を如実に示している楽曲に仕上がっている。前作では自由に存分に表現していた一方で、無意識下においても様々なことを頭を使って考えて、目いっぱいに表現をしていたようにも感じていたが、今作では新たな飛躍をするために制約や枠など全てを取り払ってより自由に制作されたような開放感に溢れた楽曲に仕上がっている。少しメロウな雰囲気はありつつも、緩急をうまく組み込んで高速一直線ではないアレンジを中心に、リフ自体もメタル的な要素はありながらもポップでキャッチーなものも目立ち、ほぼ完全に英語詞で2ndや3rdの頃のようにキャッチーで力強いメロディや歌詞で疾走していく楽曲は、前に配信された楽曲と同様、今までの彼らの変遷をすべて詰め込んだ、ますますアルバムへの期待を煽る名曲である。全1曲。 | |
☆☆☆★★★ | Seeds Of Awakening |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Conscious+Practice (2018) | |
ジャケットが物語るように4人の力を一つに集約して純粋に音で勝負してきたように感じる待望の9th。前作以降のシングルはほぼ全編が英詩となっており彼らの次の一手が注目をされていたが、前作にも飛び道具的に収録されていた彼らなりのHardcoreこそ若干異なるものの、2曲目以降はあの頃の彼らが思い焦がれていた彼らの魅力が存分に詰め込まれた楽曲の数々が揃っている。先行シングルにあたる4曲目や12曲目だけでなく、既にライブでは披露されていた2曲目や3曲目はキャッチーなメロディと一気に駆け抜けていく疾走感が非常に心地よかったり、10曲目は速さの中でのテクニカルさは過去最高のものであり、5曲目は蠢くようなベースラインが気持ち良く、6曲目はSkaテイストの楽曲であったりと過去にも取り入れていた様々な要素を目一杯全方位的に振り切った楽曲が揃っている。それは原点回帰と言ってしまえば早いかもしれないが、本作が意味しているのはそこではないだろう。もちろん初期のような速さや疾走感、西海岸の空気感にこだわった部分は多分に見られるが、原点とは自らが受けた影響によって構築されたものである。しかし本作が意味しているのは多層的に構築されたツインボーカルの絡みやそれぞれのパートが主張しつつもバランスよく音的に配置されたこれまでの彼らの歴史を全て包括して今の彼らが作り出すことのできる。Melodic Punkであり、ここ数作の定番であったお祭りソングを封印したことも併せて新たな原点を作り出したと言えるだろう。これまでの経験で培ってきたことを意識し(Conscious)、未来への実行(Practice)に繋がる金字塔的な作品である。全14曲。 | |
☆☆☆☆★ | Broken Bones / Fear of Change / Seeds of Awakening Hello Daphnia!! / Drop Like Water / Visible / Better Yet, Better Off Phoenix / Grown Kids |
Fast Melodic Punk | Rufio "Perhaps, I Suppose..." |
Give It All (2019) | |
2019年10月22日をもってギターのKubotyが脱退し、新しくオリジナルメンバーの3人の新体制で始動した23日当日に配信された3ピースとしては初のシングル。冒頭こそしっとりとした囁くように始まるが途中で加速し、結局は彼ららしい疾走感あふれる楽曲になっており、新たな形での始動となるが3人それぞれの持ち味が遺憾なく発揮されている。冒頭の中音域で力強くも温かみのあるShunの声と途中でメインがJoseに変わるが、高音域を支えるJoseのツインボーカルをこれまで以上に全面に押し出したハーモニーの一体感はこれまで以上にシンプルだからこそピュアに響き、それをボトムから支えるBuntaの速さの中にも縦のリズムをも感じさせるドラミング。もちろんKubotyが担っていたメタルやハードロックの要素はバンドとしての最少人数ということもあってなくなっているが、その分Melodic Punkとしての純度が上がっていると言える。これはバンドの極初期の姿を彷彿とさせるものであり、名義は同じながらも精神性や楽曲など全ての面で本当の意味での原点回帰となった、そして今後の方向性を指し示す道標のような楽曲である。全1曲。 | |
☆☆☆★★★ | Give It All |
Melodic Punk | ------------------------------ |
ALL AGES (Worth a Life) (2019) | |
3ピースとして再始動を果たす10枚目のアルバムへの先行シングルとして新たに配信されたシングル。前作のシングルも同様であったが。Kubotyが抜けたことによりMelodic Punk要素の純度がより一層増しており、メンバーが1人少なくなった分3人それぞれの個性がより一層際立っていると言える楽曲になっている。また前作と同様にShunがメインボーカルをとっており、中低音域で力強くも温かみのあるShunの声質を中心に、Joseの高音がこの曲ではコーラスとしてスクリーム気味に入り込んでいたり、Buntaが併せてコーラスでメロディに厚みをもたらしている。ギターもほとんど重ねずに1本でアレンジされており、その分リズム隊の音が非常にくっきりとしている。アルバムの方向性をこの2曲が示しているのか、それとも新たな姿の一部分でしかないのか、アルバムが非常に楽しみである。全1曲。 | |
☆☆☆★★★ | ALL AGES (Worth a Life) |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Milestone (2020) | |
3ピースとなって新たなスタートとなった10th。先行シングルがMelodic Punkとしての純度を高めた楽曲であり、これまでとは少し違う側面を押し出していた部分もあったが、基本的には従来までの延長線上にある作品であると言えるだろう。もちろんKubotyが大部分を担っていたメタル要素はほぼ皆無となった点は3人のTOTALFATとして新たな局地に立ったことに繋がる部分であるが、Kubotyが抜けたことによって失ったものを十二分に埋め、新たな魅力が込められている。1曲目にここ数作で入っていたScreamを取り入れた楽曲で始まるかと思えば途中で大きく変化し、結局はピュアなMelodic Punkであり、根底は何も変化していない。しかし全てが過去の延長線上にあるわけではなく、Low IQ 01をゲストに迎えた2曲目ではアイリッシュテイストを存分に取り入れ、7thのようなレベルミュージック要素があったり、5曲目ではお得意のお祭り要素を入れつつもハードロック色の強いソロがあったりなど、これまでの全てを踏まえて踏襲し、古今東西様々なサウンドや要素をうまくブレンドした上で現在のフィルターで再現していると言えるだろう。またJoseがメインであることは変わらないものの、ギターが1本になったことにより音域がぶつかるためかShunがメインを取る楽曲が増えている点もここ10年ほどではなかったことであり、これは結成当初を彷彿とさせる部分でもある。3人でしかできないことを突き詰め、ツインボーカルをこれまで以上に全面に押し出し、3人の個性を突き詰めた作品をリリースした彼らがこの先どのように進化、深化していくのか期待感しかない最高の始まりの作品である。全12曲。 | |
☆☆☆☆ | Heroes From The Pit / Welcome to Our Neighborhood ALL AGES(Worth a Life) / My Game / S58’ Give It All / Mirror / MONSTER |
Melodic Punk | Punkhoo "The Forward Road" |
Smile Baby Smile (2020) | |
3ピースとして本来であれば記念すべき10枚目のアルバムを引っさげて新たなスタートを切るはずであったが、新型コロナウイルスの影響により初日以降が20周年記念のライブも含めて延期になってしまった間に制作、配信されたシングル。世界中が先の見えない閉塞感に包まれている中で、今作ではそれを力強く明るく吹き飛ばすかのようなハッピー感に溢れている。シンプルながらも情感豊かな少し速めのアルペジオから始まり、そこから一気に裏打ちで軽快なリズムと疾走感にあふれており、シンプルながらもわかりやすい彼ららしい前向きなメッセージが非常に印象的である。これまでの彼らなりのお祭りソングとは異なり、聞く側に寄り添い励ますかのような暖かさを持った楽曲であり、ルーツの一つでもあるThe Offspringを彷彿とさせるような精神性は、反抗心などだけではないPunkの魅力を十二分に感じさせてくれる楽曲である。全1曲。 | |
☆☆☆★★ | Smile Baby Smile |
Melodic Punk | ------------------------------ |
夜明け待つ (2020) | |
新型コロナウィルスの影響により新たなスタートとなるはずであったツアーが振替公演も含めて全てが中止となってしまった彼らがそのウサを晴らすかのような力強さを兼ね備えた、配信限定シングル。前作のシングルもそうであったが、新体制になってからは彼らの持つオリジナリティや武器をピュアに突き詰めている楽曲が非常に目立っていると言えるだろう。メタルの要素が薄まったことにより、キャリアを重ねた円熟味を兼ね備え、純度を増した疾走感と共に本作では彼らのパーソナリティにもつながる非常にポジティブな精神性が現れている。これは彼らが日本語を導入し出した時から顕著になっていたことではあるが、その時点での彼らの思いを素直に言葉と音楽にして発信できることが彼らの持ち味であり、それが遺憾なく発揮された楽曲と言える。全1曲。 | |
☆☆☆★★★ | 夜明け待つ |
Melodic Punk | ------------------------------ |
Will Keep Marching (2020) | |
コロナ禍において彼らの主戦場であるライブが行えない状況が続く中でも、その分制作を精力的に行っている彼らが初の通販限定アイテムとしてリリースしたEP。先立って行われた無観客配信ライブと同じタイトルの今作は既に配信済みの2曲に加えて新曲が2曲、そして忌野清志郎のカバーを含んだ5曲であるが、どれも彼ららしいサウンドが詰め込まれている。特に3ピースになってことによって3人が果たす役割が大きくなり、バランスが良くなっている。彼らの魅力はいくつもあるが、その中でも近年は彼ら個人が持つポジティブな空気感がバンドとしても如実に現れており、それはMarchingという言葉に集約されているとも言えるだろう。全5曲 | |
☆☆☆★★★ | Marching For Freedom / My Secret Summer 世界中の人に自慢したいよ |
Melodic Punk | ------------------------------ |
A Year Of Strength (2023) | |
独立後初となる、EP。3人体制になって久しいが、メタリック要素が薄くなった一方で3人のバランスを重視した新体制以降のサウンドを突き詰めたかのようなバラエティに富んだ作品と言えるだろう。1曲目は4人時代からもあったが3人になってから特に如実になってきたSka的な要素と打ち込み要素も感じさせるダンサブルでかつ縦ノリのサウンドと疾走感があるサウンドを組み合わせた楽曲は彼らにしか出せないと言える。また2曲目はおそらくJose作曲がベースとなった彼らの持ち味の一つであるお祭りソングであり、ただし今までのようなある種全てを忘れさせるような底抜けな明るさを打ち出した能天気さだけでなく、生活に根付いたようなレベル・ミュージックの要素も感じられる。そして3曲目はGood fight & promise youなどを彷彿とさせる展開ではあるが、Joseの高音とShunの低音の間を保管するBuntaのコーラスが随所に入ってきたり、冒頭からツインボーカルをメインに押し出した楽曲はこれまでになく王道ながらも現在の彼らの姿を存分に盛り込んだ楽曲であり、少ない楽曲ながらも彼らの魅力を凝縮したかのような作品でありアルバムへの期待感が高まる作品である。全3曲。 | |
☆☆☆★★★ | New Shit / Fireworks / Garakuta |
Melodic Punk | ------------------------------ |