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Scott Sellers

The Judge (2018)
RufioのボーカルであったScottのソロEP。ただしソロでありながらもRufioの新作と言っても差し支えないくらいにそのままの楽曲であり、やはりあのバンドにおいてScottの果たす役割はフロントマンということに留まらずに大きかったのだと如実に表している作品である。基本的には終始高速で駆け抜けつつも、Rufioの2nd以降のように甘さや青さを醸し出した高音のメロディは彼特有のサウンドであると言えるだろう。しかしその一方で3曲目のように高速でテクニカルな要素を詰め込みながらもアイリッシュを感じさせるリフや5曲目のように過去の延長線上にありつつもメロディだけではなくポップなコーラスを入れ込んでいたり、リフも丸みを帯びたサウンドプロダクションで暖かさを出していたりなど今までにはなかった要素もちらほら見え隠れしており単なる過去の焼きまわしではない。テクニカルではあるがそれが過度に主張しておらずに攻撃性が全くないことが本作の特徴であり、10s以降のMelodic Punk/Hardcoreとは一線を画しており、聞き所の一つとなっている。全7曲。
☆☆☆★★★ Drugs / Gravity / Evolution / Closure / Perspective 
Fast Melodic Punk Pulley "Together Again For The First Time"
The Jitters (2018)
前作から半年ばかりと早くも2作目となる2nd。前作以上にRufioの新作とも言ってよいような青さを感じさせるメロディがテクニカルな要素と疾走感に織り交ぜられている。ただしそれはもはや勢い任せの速さや疾走感ではなく、ベテランだけに計算尽くされた速さのように感じられる。またテクニカルなリフを相変わらずふんだんに盛り込んでいるが、それが決して他の邪魔をしていたり主張しすぎている訳ではなく、サラッと流れるように一体化しているため重さが過度に強調されることもなく、速さも1曲目や3曲目のように高速ですっ飛ばしている楽曲もあれば4曲目のように少しテンポを落としてメロディを強調している楽曲があったりと、曲だけでなく作品全体でも緩急のコントラストが非常に強く、作品全体としてより一層速く感じる。そして何よりも今作ではRufioの1stを彷彿とさせるようなメロディが全編に渡って繰り広げられており、あのアルバムの特徴の一つであったメロディに対してのカウンターとしてのリフやコーラスが前作以上に盛りだくさんである。全9曲。
☆☆☆☆ Confessions / Strike it Rich / Apollo / Ready or Not
Never Said / Somewhat Oiled Machine
Fast Melodic Punk Potential Getaway Driver "Fire, Ice And Lukewarm Water"
Strings (2018)
既に2018年で3作目と驚異的なハイペースでリリースを重ねる彼の曲数的には1stとも言える本作は、今までのような速さとテクニカルさ、そこに甘酸っぱいメロディが乗るというScott節はそのままでありながらも、少しスピード感を落としてメロディを重視したかのような楽曲が並んでいる。そのように感じるのは要所要所にストリングスを入れ込んでいたりすることにもよるだろう。しかしそれは本作の一つの側面でしかなく、全体としては今まで通りの2ビートで速さを押し出しつつもメロディの裏で単音リフが鳴り続ける4曲目のようなScottの高音が伸びやかでありつつも少し線が細く、甘酸っぱさや青臭さは未だ健在である。だが今作では全体的な速さは保ちつつも今までになかったような要素を存分に入れてきた意欲作であるとも言えるだろう。2曲目のように速い8ビートで少しブルースの香りを感じさせる楽曲があったり、メロディのカウンター的に重さも前に押し出した8曲目など従来までの持ち味を残しながらも様々なアプローチがなされており、今後の作品がまた楽しみになる作品である。全10曲。
☆☆☆★★★ To The Sky / Electric / Grounded / Creation / Barely Brass
Fast Melodic Punk Boardroom Heroes "Boardroom Heroes"
Being Strange (2019)
Mercy Streetのリリース以降、一切の音沙汰がなかった彼が約1年余りの間で既に4作目というハイペースでリリースを重ねる、ソロとしての1st。これまでの3枚のEPではそれぞれが根底は変わらないものの少しずつ毛色が異なった楽曲の幅を垣間見せていたが、本作に収録されているのは紛れもないRufioの新作と言っても良いくらいあのサウンドである。Scottの高音で爽快感の中に見え隠れする甘酸っぱさや力強くもどこかナよっとした部分も感じさせるメロディが、高速で疾走していきつつもテクニカルなリフと絡み合っている。また、その青臭いメロディに対してのカウンターであるかのようなキラキラしてテクニカルなリフが全面に入り込んでいるが、1曲の中で緩急であったり音の足し引き、作品全体としても1曲目は少しテンポは落とし気味で2曲目では疾走感抜群で高速で飛ばしていくなどような対になっているかのような構成をしており、1つの軸に対してのアプローチが多彩な作品に仕上がっている。全11曲。
☆☆☆☆★ Only In December / Our Own Advice / Day One
How To Be The Best / Chemistry / Free / Being Strange
Fast Melodic Punk Symphony Of Distraction "Call It Off, John"
Power Hungry (2019)
もはや超人とも言えるべき驚異的なペースで前作から1年経たない間にリリースされた2nd。これまでの作品も同様であるが、Rufio=Scottという図式が結果的に出来上がってしまうのは仕方ないと思えるくらい良い意味で何も変化していない、あの頃のサウンドそのままの作品である。しかしテクニカルな側面はあるものの本作では単音ではなくコードワーク中心になっており、ギターだけが突出しているようにはあまり感じないのが特徴であると言えるだろう。もちろん1曲目のように従来までの延長線上にある楽曲も多々あるが、2曲目はメロディを押し出しつつも併せて単音リフが前に出てくるのではなく、各パートそれぞれが主張し、3曲目や6曲目は少しテンポを落としてメロディの瑞々しさを十二分に堪能できる。そして9曲目はバンドとしてのアンサンブルを駆使した緩急の効いたアレンジに、どことなくオリエンタルな雰囲気を持ったリフが印象的などどれも多彩であり、またその裏でボトムを支えているベースが今作は要所要所で主張しており、良いアクセントになっていると言える作品である。全11曲。
☆☆☆☆ Eye of the Storm / Power Hungry / Back to Earth
Borderline / Solitary / Lead the Way / In Repair
Fast Melodic Punk Craig's Brother "The Insidious Lie"
Unplugged, I Suppose... (2020)
楽曲自体を0から作り出すという作業がないことを考慮しても、常人ではないペースでリリースを続ける彼の初となるアコースティックによるセルフカバーアルバム。楽曲はRufioの1stからの選曲が若干多いものの、ソロやMercy Streetの楽曲からも選ばれており、彼の歴代の楽曲のほんの一部ではあるものの満遍なく堪能できると言えるだろう。アレンジ自体も決してアコースティックでリアレンジをしたというだけでなく、楽曲が本来持つメロディの良さや疾走感を残しつつも、そこに多層的に重ねられたアコギによる単音とストロークが重厚感を生み出し、更にはストリングスを入れ込むことによって荘厳な雰囲気を兼ね備えている。そして何よりもタイトル通りアンプラグドで全てを構成していることにより、重厚感の中にも温かみがあ、メロディの質感は変わらないものの、青臭いメロディを活かすかのような透明感のある疾走感は健在である。全9曲。
☆☆☆☆★ Above Me / Closure / Don't Hate Me / Gravity 
The Grey / Road to Recovery
Acoustic Superchunk "Acoustic Foolish"
Influence (2020)
リリースペースの落ちない彼がオリジナル作品を挟んで数カ月後にリリースしたカバーアルバム。今作はタイトル通り影響を受けたバンドのカバーであるが、選曲はほぼ同じ時期にリリースされたThousand OaksAlexのソロとは異なり、ほぼ各バンドの代表曲からセレクトされている。原曲とアレンジは大きくは変わっておらず良さを十二分に残しつつも、随所に彼らしいテクニカルながらもさらっと聞かせる単音リフを混ぜ込んだリフが挟み込まれScottというフィルタを通して完全に消化していると言えるだろう。それはメロディの良さを色褪せることのない彼の力強くもみずみずしいボーカルが引き立てつつも、裏で鳴り続けるテクニカルなリフを両立させたRufioから続く彼の手法がいかんなく発揮されている。特にそれは原曲ではテクニカル要素が少ない5曲目であったり7曲目などでは質感を大きく変える結果となり、新たな魅力の発見にも繋がっている作品である。全12曲。
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Fast Melodic Punk No Use For A Name "Rarities, Vol.1: The Covers"